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新書と専門書の間―"選書"とは一体何なのか!? ~『分断の克服 1989-1990』『日本の保守とリベラル』中公選書が今熱いワケ!~

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた 連載第12回

~選書の歴史をひもとこう~

そもそもの起こりは1950年後半、雑誌『中央公論』に、気鋭の研究者による100枚(400字)程度の論文を載せはじめた時期があり、それがある程度溜まったものを本にする際、「中公叢書」という形で出版したことでした。累計30万部を超えるベストセラーとなり、現在まで読み継がれている梅棹忠夫さんの『文明の生態史観』もここから生まれました。

シリーズ化すると多くの場合、書店にそのシリーズのための棚のスペースを作ってもらえるので長く置かれるというメリットがありますが、一方で定期刊行物となるので(当時の叢書は厳密には不定期だったようですが)毎月出てないといけないという大変さもあります。それがだんだんと点数が減っていき...というタイミングで、別の編集者が新たに「中公選書」というレーベルを立ち上げます。2011年のことでした。吉田編集長によれば、「当時の中公選書は中公叢書よりも柔らかい、書き手も幅広くと意識して読者を広げようとしていた」とのこと。

この頃世には"選書ブーム"なるものが到来していた、ということをまとめた、「新書ブーム余波 教養書の仕切り直し? 「選書」相次ぐ創刊 岩波も」という記事を発見しました。結びでは当時の岩波現代全書編集長馬場公彦氏が

 

"「新書はもはや作り手にとって何でもありの状態になり、飽和状態。一方で学術単行本も、近年ますます学界の中だけにしか届かない本になってしまっている。内容でも価格でも両者の距離が広がる今、その間を埋める器が必要だ」"

https://www.sankei.com/article/20130624-PAXG6H6IANPWBASMBNKLB37K74/

 

と発言しています。

このような経緯でしばらくふたつのシリーズがともに不定期ながら走っていたものの、叢書があまりに専門性が高くなったことと、選書の刊行ペースが落ちたことから、吉田編集長が統合を提案。名前は、各レーベルが「○○選書」でほぼ統一されており、「叢書」という字がもはや読めないのではといった意見から「中公選書」とし、20201月から隔月刊行で現在まで続いています。

選書の立ち位置と意義

以上みてきたように、選書のはじまりは若手研究者の論文の書籍化で、一方新書はもともと研究を極めた著者が一般読者にわかりやすく広めるためのレーベルだったのが、ビジネス書や実用書などあらゆるジャンルの新書がでてきたことから、選書がその穴を埋めるために復興してきたという流れでした。吉田編集長に言わせれば、「『保守主義とは何か』『リベラルとは何か』は中公新書だけど、『日本の保守とリベラル』となってくるとそれは選書の担当するテーマ」とのこと。まだ学問的に均されていないが、そこについて深く書いたものを、それでも研究者ばかりが読むものにしないように、と作られているのです。

 

大型書店では多くは新書の隣にデンと構えている選書。専門書の難しさに絶望したり、あるいは新書の内容にがっかりした時は、ぜひ、手に取ってみてください。

 

次回は224日配信予定です。

お楽しみに!!

分断の克服1989-1990――統一をめぐる西ドイツ外交の挑戦

板橋 拓己

一九八九年に「ベルリンの壁」が崩壊し、ドイツ統一への機運が高まる。だがソ連のゴルバチョフは統一に反対。英仏やポーランドも大国ドイツの復活を危惧し、米国のブッシュは冷戦の勝利とNATOの維持拡大を優先する。冷戦後の国際秩序について各国の思惑が交錯する中、「ヨーロッパの分断」を克服する外交を展開したのが、西ドイツ外相ゲンシャーだった。本書はドイツ統一をめぐる激動の国際政治を、最新の史料を駆使し描き出す。

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