18巻を18日。新入社員のわたしが夢中になった理由
通勤の車内で眠るよりも、『デルフィニア戦記』を読んでいた方がずっと元気になるくらい面白かったこのシリーズ。23歳のわたしにとっては生まれる前の古い作品だ。それでもこれほど魅了されたのは、ファンタジーなのに自分と重ね合わせてしまうところがあったからだと思う。
例えば、男性の心を持ったまま美しい女性になったリィが素朴に問う、女性にとっては当たり前とされていることは、わたしが日頃言葉にできない、"女だから"に対する鬱憤と重なった。他にも、変わり者といわれるウォルの言動ひとつひとつからは、物事を表面的に見ていないかと問われているような気がした。
戦記とは、戦いや試合などの記録。だからこそ、そこには戦わなければならない理由や苦悩、成長が描かれている。戦いは現代のわたしたちが過ごす学校や会社、家庭にもある。自分の確固たる願いにむかって進むときどう戦えばいいのか、わたしはこのシリーズに教えられた気がした。もっと言えば、生き抜けと背中を押された気がした。葛藤する何かがあったとき、わたしはこの戦記を頼りに進んでいこうと思う。(文・U)
デルフィニア戦記
茅田 砂胡
男は剣を揮っていた。黒髪は乱れ日に灼けた逞しい長身のあちこちに返り血が飛んでいる。孤立無援の男が今まさに凶刃に倒れようとしたその時、助太刀を申し出たのは十二、三と見える少年であった……。 二人の孤独な戦士の邂逅が、一国を、そして大陸全土の運命を変えていくーー。