今夏の「はだしのゲン現象」を夏の終わりに振り返る

若手社員の いま気になるあの本
中央公論新社の若手社員が、刊行の今昔を問わず「いま」気になっている本について自由に語る企画。
第3回は、今夏に目覚ましい売り上げをみせた『はだしのゲン』について、取り上げます。

『はだしのゲン』が例年以上に売れている

この夏、弊社の文庫コミック『はだしのゲン』が例年以上に売れた。「読まれた」ではなく、「売れた」とあえて書いたのは、出版社に入って数ヵ月の新人が、すっかり営業部員として一人前ぶろうとしたのではない。この表現の方が、今年の「はだしのゲン現象」をよく表していると思えたからだ。

『はだしのゲン』は弊社文庫コミックの他に、汐文社と金の星社が取り扱うものがあるが、ここではとりあえず弊社の商品のみに話を限りたい。弊社で扱う『はだしのゲン』は、コミック文庫で17巻、本体価格は一律で705円である。書店で大人買いすればそれなりの額になり、それなりの重量を腕にぶら下げて帰ることになる。それが、広島の書店からは全巻セットの注文が相次いだ。

テレビで取り上げられたことも大きかったはずだ。有名どころだけでもNHKのクローズアップ現代やテレビ朝日系サンデーLIVE!!が『はだしのゲン』を特集した。例年、初夏から8月にかけて売り上げが伸びるとはいえ、今年と昨年の8月を比較してみると、『はだしのゲン 1巻』の全国書店での売上累計冊数は、なんと約40倍だ。売上データに示されていた「前年比4016.53%」という数字には僕も目を疑った。思わず隣に座っていた先輩に「これは本当ですか」と確認してしまったほどだ。

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