人口減社会の諸問題

深層NEWSの核心
近藤和行/玉井忠幸

◆労働力不足をどうするか

「人手不足の背景には少子高齢化があり、景気上昇に伴う一時的なものでなく、構造的に長く続く」=小峰隆夫・法政大学教授(十一月十四日)

玉井 日本全体の問題に目を転じると、少子高齢化による人口減は必然的に生産労働人口の減少をもたらし、日本経済の成長の足かせになっていくのでは、という懸念があります。

近藤 「働く人が減る」ということは、同時に「消費してお金を使う人も減る」ということでもあり、経済に対する影響は大きい。そこでは、やはり女性や高齢者の活用が欠かせません。とりわけ女性に関して言えば、従来の男性並みの長時間労働だけではなく、ゆとりある働き方ができるようになれば働ける人も増えるでしょう。それは同時に少子化対策にもなる。

玉井 安倍政権で女性活躍担当相が設置されるなど、政府もこれが重要なポイントであることはわかっている。高齢者も、六十歳で定年になったら働かなくても年金で生活できる、という時代ではないのですから、「働けるうちは働く」という意識は広まってきたような気がします。

「外国人技能実習制度の対象職種を増やしながら、同時に監督を厳しくする必要がある」=自民党の塩崎恭久政調会長代理(五月二十二日)

近藤 労働力不足に関しては、外国人労働者を受け入れるべきかどうかという議論もあります。「同質性の高い日本にはなじまない」といった主張もあれば、研究者など「高度人材」を中心に外国からの人材は必要だという声もある。一方では、塩崎氏が触れた外国人技能実習制度は、「外国人を安い賃金で酷使する制度になっている」との批判も一部にある。外国人労働者のあり方については、引き続き国民的な議論を重ねていくべきでしょう。

玉井 労働人口の減少を補うためには、労働者一人当たりの生産性を上げていくことも重要です。その点では、アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略の成否も注目されます。

◆社会の仕組みを変える

「空き家の増加は、住環境の健全な維持に大変な悪影響をもたらしている」=自民党「空き家対策推進議員連盟」の宮路和明会長(九月十七日)

近藤 人口減の影響は、思わぬところにも出てきています。空き家の増加といった問題がまさにそれです。

玉井 全国の総住宅数に占める空き家の割合は、一昨年、過去最高の一三・五%に達しました。人口が増加していた時代には考えられなかった事態です。

近藤 不審者が入り込むなどして、地域の治安面に悪影響が出てくる可能性もあります。地方では、空き家をUターンや、Iターンする人たちのために活用している事例もあるようですが、社会の側も空き家をうまく活用できるような仕組みを整える必要がある。

玉井 最近議論を呼んでいる国政選挙の「一票の格差」の問題も、人口減の問題と絡めて再考すべき点があると思っています。人口に応じて機械的に議席数を割り振れば、人口減の激しい地方の国会議員はますます減り、都市部の議員ばかり増える。日本全体のことを考えた時に、もう少しバランスの取れた考え方があっていいのでは、という気がします。いずれにせよ、人口減の進む社会にこれからどう対応していくか。残された課題は多いですね。

構成/読売新聞調査研究本部 時田英之

〔『中央公論』2015年2月号より〕

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