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SNEPの危険な現実 「働き盛りの孤立無業者」を救え

若者を社会につなぐコツ
玄田有史(東京大学教授)

 あと戻りできない本格的な人口減少社会に、日本はいよいよ突入した。

 総務省発表によれば、二〇一一年十月一日時点の日本の推計人口は、一億二七七九万九〇〇〇人。わずか一年で二五万九〇〇〇人も減少するという過去最大の下げ幅となった。経済の活力を維持するため、働き手の確保は喫緊の課題である。

 そのための対策として、少子化対策の練り直しや、外国人労働者の受け入れ拡大などが提案されている。ただ、そこには重要な論点が抜け落ちている。

二〇一〇年平均で、日本の就業者数は、六二五七万人。一方、仕事をしていない「無業者」は、高齢者や専業主婦を中心に、四七八六万人にのぼっている(十五歳未満を除く)。

 子どもが増えるのをアテもなく待ったり、やみくもに移民の流入を決める前に、やるべきことがある。まずは「眠れる就業者」である無業者のなかから、働ける人には一人でも多く働いてもらう。それが何より必要なのだ。

 実際、六十歳以上では就業者が近年、着実に増えつつある。ところが現在、働き盛りの無業者に異変が生じているのだ。

孤立無業(スネップ)

「社会生活基本調査」という総務省統計局による調査がある。国民の生活時間と生活行動の把握を目的に、一九七六年以来、五年ごとの十月に行われているものだ。

 そこでは調査対象となった約二〇万人が、指定された連続二日間に「誰と何を何分くらいしたのか」を、全四八時間について回答している。さらには旅行やスポーツ、インターネットの利用状況なども、過去一年にさかのぼり調査される。この調査から、ふだん仕事をしていない無業者が、どんな日常生活を送っているかがつぶさにわかる。

 筆者は、東京大学大学院生の高橋主光氏との共同研究により、社会生活基本調査の匿名データを活用し、以下の新しい無業者の概念を定義、その実態を調べてきた。

「二十歳以上五十九歳以下の在学中でない未婚者で、ふだんの就業状態が無業のうち、一緒にいた人が家族以外に一切いなかった人々(調査された連続二日間)」

 この定義に合致する無業者を「孤立無業者」と呼ぶ。孤立無業者は、英語ではSolitary Non-Employed Personsと訳せる。その頭文字を取れば、SNEP(スネップ)になる。

 そんな、家族以外とはまったく交わりを持たないスネップが、増加しているのだ。

〔『中央公論』2012年8月号より〕