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国際教養大学が既存の大学に突きつけた課題

中嶋嶺雄(国際教養大学理事長・学長)×潮木守一(名古屋大学名誉教授)

就職率一〇〇%を目指したわけではない

潮木 秋田の地に国際教養大学が生まれたのが二〇〇四年。私も学部や大学院を新設するために汗を流したことがありますから痛感するのですが、開学から一〇年足らずで、入試難易度も全国屈指、就職率一〇〇%達成という成果はなかなか実現できない。学生にとって、企業にとって、何がいちばんアトラクティブなのでしょう。開学以来学長を務める中嶋先生の個性や魅力はもちろんですが、それだけでは学生は集まりませんし、企業は注目しません。

中嶋 僕がいつも言うのは、大学は就職のためにあるのではないということです。就職率一〇〇%を目指して、やってきたわけではありません。国際教養大学がすべての授業を英語でやり、一年生は全寮制で外国人留学生とルームシェアをし、一年間の留学の義務がある。これらはすべて、名前の通り、国際教養を身につけるためです。特に、留学は学生を鍛えます。学生たちは、その器を大きくして帰ってきます。それが就職につながったと考えています。
 おっしゃるように新しいことを始める苦労がなかったとは言いません。でも、新しい大学だからこそ達成できた面もたくさんあります。悪しき伝統の残る大学ではなかなかできないことを、原則を枉げずに貫くことができた。それが、学生にも世の中にもアピールしたのだと思います。国際教養大学の前、僕は東京外国語大学で学長をしていましたが、その時は教授会というものに、さんざん苦労させられました(笑)。英語教育を改革しようと議論を重ねた時も、結局何一つ決めることができなかった。

潮木 よくわかります。教授会というものは、なぜああも足を引っ張る存在なのか。(笑)

中嶋 教授会自治や大学自治自体が問われている時代であるにもかかわらず、それらの改革に向かおうとしないのが、国立大学の大きな問題点です。既得権、人事の党派性、仲間意識、学閥......。これらが事態をいつでも紛糾させる。国際教養大学では、教授会は三〇分で済ませることにして、細かいことは教育研究会議と経営会議で決める。教授会を大学経営から切り離したのです。人事権も最終的には学長にあります。

〔『中央公論』2013年2月号より〕