ネタの宝庫か、「カルロス・ゴーン・ジョーク」いろいろ

稀代の経営者か、ケチな犯罪者か
早坂隆
イラスト◎つだゆみ
 2019年12月、当時保釈中だったカルロス・ゴーン被告が海外へ逃亡したニュースは、世界で大きく報じられました。あれから1年余り、逃亡を手助けしたという親子が逮捕されたり、妻との共著本の出版を発表したりと、ゴーンにまつわるニュースは未だ絶えません。
 日産を危機から救った経営者としての名声と、その後の逮捕、脱走……。累計100万部突破の人気シリーズ「世界の日本人ジョーク集」で知られる早坂隆さんが、ジョークを通して彼のキャラクターを描きます。

※本稿は、早坂隆『世界の日本人ジョーク集 令和編』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

まずは、「ゴーン・ジョーク」から

【提案】

 日産自動車の社員がカルロス・ゴーンに言った。

「私はいつも2人分の仕事をしています。給料を2倍に上げてください」

 するとゴーンが答えた。

「君は誰の分の仕事をしているんだね? そいつをクビにしよう」



【葉巻】

 とある葉巻屋に日本人が入ってきて店主に聞いた。

「その葉巻はいくらですか?」

 店主が答えた。

「1本で5ドル。2本買うなら、2本目は3ドルでいいよ」

「1本で十分です」

 日本人は5ドルを支払って、店を出て行った。

 そのやりとりを店内で見ていたカルロス・ゴーンが、すかさず店主に3ドルを出して言った。

「その2本目を買おう」


コスト・カッターとしての面目躍如

 1999年6月、日産自動車の最高執行責任者(COO)に就任したカルロス・ゴーン。レバノン系ブラジル人で、「コスト・カッター」の異名を持つ彼は、「日産リバイバルプラン」を発表し、強烈なリストラ策を断行しました。5つの国内工場を閉鎖するなど、2万人にも及ぶリストラを実施した結果、同社は経営危機から脱しました。

 日産再建の立役者で、敏腕・カリスマ経営者。ゴーンは長らく、そのようなイメージで語られてきました。あの事件までは......。

【節約】

 カルロス・ゴーンの息子が息を切らしながら家に帰ってきた。

 ゴーンが息子に聞いた。

「どうした? 何かあったのか?」

 息子が答えた。

「今日はオフィスから市電の後を追って走って帰ってきたよ。これで1ドルの節約だ」

 ゴーンが不満そうな顔をして言った。

「それならおまえは、どうしてタクシーの後を追って8ドル節約しなかったんだ!」



【壺】

 カルロス・ゴーンが贈呈用に高価な壺を購入した。店員が言った。

「値札は外しておきますね」

 ゴーンが答えた。

「いや、外さなくていい。ついでにゼロを2つ書き足しておいてくれ」


世紀の大脱走を経て、今

 2018年11月、金融商品取引法違反で逮捕。2019年1月には特別背任罪で追起訴されました。
 ところが同年12月、東京都内の自宅から中東のレバノンへ密出国で逃亡。レバノンは彼の両親の出身地ですが、この逃亡劇は世界的にも大きなニュースとなりました。
 逃亡には米軍の特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員であるアメリカ人や、10名以上の「プロの運び屋」が手助けしたとのこと。帽子とマスクで顔を隠して自宅を出たゴーン被告は、「音響機器運搬用の黒い箱」の中に身を隠し、プライベートジェットを使って日本を出国。トルコで乗り換えて、レバノン入りしたと言われています。

 こうしてレバノンでの生活を始めたゴーン被告。かつては同国で切手の肖像になるほどの存在でしたが、今では「腐敗のシンボル」として厳しい目を向けられています。
 2020年8月には、レバノンのベイルート港で爆発事故があり、ゴーン被告の住んでいた豪邸も大きな被害を受けたと報じられました。フランス紙には「ゴーンがホームレスになった」との見出しが躍りましたが、実際には「窓ガラスが割れた程度だった」との報道もあります。

 そんな彼の激動の生涯は、ハリウッドで映画化されるという噂も。主演は容姿の似ているローワン・アトキンソンではないかと囁かれています。
 映画と言えば、名作「風と共に去りぬ」の原題は「Gone with the Wind」。
 ゴーンも風と共に......。

【伝授】

 カルロス・ゴーンのもとに、北朝鮮の国民から大量のメールが届いている。

 その内容は以下のようなものだという。

「国から脱出するコツを教えてください」


世界の日本人ジョーク集 令和編

早坂隆

累計100万部突破の人気シリーズの新作が、令和に時を移し、ついに登場。総理大臣も大統領も代わり混迷を極める世界。笑いの力で乗り越えよう!

早坂隆
1973年、愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)をはじめとするジョーク集シリーズは、累計100万部を突破。『昭和十七年の夏 幻の甲子園』(文藝春秋)でミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。他の著作に『指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎』『永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」』(共に文春新書)等。主なテレビ出演に「世界一受けたい授業」「王様のブランチ」「深層NEWS」等。Twitterアカウント:https://twitter.com/dig_nonfiction
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