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室橋祐貴 意外と好評なリモート授業。大学サークル文化は存亡の危機?

大学生が今本当に望んでいることは?
室橋祐貴(日本若者協議会代表理事)
 コロナ禍に入って2年。対面授業や「キャンパスライフ」に制約がかかり、大学生活は大きく変わった。しかし、「大学生の不満は限界」「オンラインならこの大学を選んだ意味がない」「対面授業に戻してほしい」という意見ばかりかというと、そうでもないようだ。現在の学生の不安や要望にはどのようなものがあるのか、日本若者協議会代表理事の室橋祐貴さんにレポートしてもらった。
(『中央公論』2022年2月号より抜粋)

増えていない大学中退者

 コロナ禍における経済的困窮や、オンライン授業などによる精神的なストレスによって、大学生の中退が増えるのではないか。そのように懸念されてきたが、2021年11月19日に発表された文部科学省(以下、文科省)の調査によると、中退者の数は、2020年度に比べて2021年度の方がわずかに減少。2020年度は、2019年度よりも少なかったことを考えると、コロナ禍においても、中退者数が増えているという事実は認められない。

 なぜ予想に反して、中退者が増えていないのか。考えられる理由は大きく二つ挙げられる。一つ目が、政府や各大学による経済的なサポートだ。

 従来、大学中退の理由は1位「経済的困窮」、2位「学生生活不適応・修学意欲低下」となっており、これはコロナ禍においても変わらない。だが、文科省の調査結果を見ると、「経済的困窮」を理由にした中退の割合は2020年度の22・7%から2021年度の20・7%に下がっており、2020年度から取り組みが始まった政府や大学の緊急経済支援の効果が出ていると思われる。

 特に、中退の申し出をしてきた学生に対し、経済支援のメニューを紹介するなど、「プッシュ型」の取り組みを各大学で進めるよう、文科省が促しており、それらの取り組みが功を奏している。

 二つ目の理由が、オンライン授業に対して、意外にも学生の満足度が高いことである。

 同じく文科省が2021年5月25日に発表した「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査(結果)」を見ると、2020年度後期に履修した授業のうち、「オンライン授業がほとんど又はすべてだった」と回答した学生は、全体の6割。

 全体的な満足度としては、不満に感じる割合より満足に感じる割合の方が高く、約6割が「満足」もしくは「ある程度満足」と回答している(図1)。

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 この調査では、オンライン授業について良かった点として、自分の選んだ場所で授業を受けられることや、自分のペースで学修できることが多く回答された(図2)。

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 当事者の声を踏まえてくだけた表現にすると、「移動せずに授業を受けられるのが便利」「朝起きてすぐに授業を受けられる」ということだ。また、これまでの大教室の授業は原則として一方通行だったのに対して、オンラインだとチャット欄で質問しやすく、双方向性が高いというのも大きい。

 日本若者協議会会員の大学生・大学院生に現状について聞いたところ、75%が「とても満足」もしくは「ある程度満足」と回答し、その理由として、「全ての授業が対面で、制限が徐々に解除されているから」(私立大学・学部1年)といった対面授業が増えたことによるもののほかに、「座学はオンラインで時間が無駄にならないから」(私立大学・学部2年)、「ゼミがオンラインなので、旅先でも聞くことができるから」(国公立大学・学部4年)、「オンラインだと学生同士の交流や相談がしにくいところが課題だが、実家にいながら他県の大学院にオンラインで通えるのは経済的にとてもありがたい」(国公立大学・修士2年)という点などが挙げられた。

 このように、世の中の一般的な反応に比べて、オンライン授業の満足度が高いのは、今の若い世代からすると、オンラインで講義を受けることにあまり抵抗がないという理由が大きい。

 

 予備校では、東進ハイスクールやスタディサプリのような、パソコンやスマートフォンを通して受講する映像授業のスタイルが広がり、YouTubeを活用して勉強することも珍しくない。むしろ、今の時代からすると、「早送り」や「巻き戻し」できないことの方がストレスかもしれない。

 オンライン授業と対面授業のどちらかを学生が選び、好きな形で出席できる講義を設けたところ、教室には誰も来ず、全員がオンラインで出席したというケースも耳にする。

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