マスコミも取り上げる機会が増えてきた宗教2世問題。その内実について、当事者、そして研究者の立場から横道誠さんが解説する。
(『中央公論』2022年2月号より抜粋)
(『中央公論』2022年2月号より抜粋)
- 自助グループの主宰者
- 宗教体験の実態
- 前史を整理する
- 21世紀の人権意識
- マスメディアが注目しはじめている
「宗教2世」という言葉が一部のマスメディアで注目を集めつつある。宗教2世とは、親が信仰している宗教を同様に信仰している、または信仰していた子を指す。
従来、多くの宗教がそのような仕組みを持っていたが、近年の日本では、これが問題視されるようになってきている。
自助グループの主宰者
まずは筆者について紹介させていただきたい。
私は自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)と診断されている。これらの発達障害(現在の正式な医学名は神経発達症群)と生活環境の摩擦が生みだすさまざまな生きづらさについて考え、少しでも生きやすさを得るために、京都やオンライン空間に自助グループを立ちあげ、仲間たちと「当事者研究」を進めてきた。
当事者研究とは、障害や疾患の当事者が自分自身の苦労の仕組みを仲間と共同研究し、生きやすさを模索する精神療法を指す。
発達障害だけでなく、自分に備わる多様な属性を研究する必要を感じるようになり、アダルトチルドレン(機能不全家族の中で育った人のこと)や、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者の総称)、そして宗教2世のための自助グループをつぎつぎに結成し、会合を重ねた。それらの成果をまとめて、2021年に『みんな水の中――「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』という書籍を医学書院から出版できた。