横道 誠 宗教2世問題とは何なのか

近年、注目を集める事情と背景
横道誠(京都府立大学文学部准教授)

マスメディアが注目しはじめている

 この状況に呼応するようにして、『日本脱カルト協会会報』は2017年に「カルト『二世』問題を考える」という特集を組み、「エホバの証人脱会者発表――子を持つ親の体験」や「世界平和統一家庭連合(統一教会)二世脱会者」といった記事を掲載した。

 2020年には当事者の渡辺みきらによってウェブサイト「宗教2世ホットライン」が開設され、さまざまな教団の元2世信者の声を掲載していった(ただし現在は休止中)。このウェブサイトの開設と前後して、私は「宗教二世問題/スピリチュアル・アビュースなど宗教被害を語りあう会」というオンライン自助グループを設立し、2~3週間に1度の間隔で1時間半から2時間の会合を開催するようになった。

 こうして宗教2世界隈はますます活性化した。2021年になると、これらの盛り上がりを受けてNHKが続々と宗教2世関連のテレビ番組を放映しはじめた。2月9日に「ハートネットTV」(Eテレ)が「"神様の子"と呼ばれて~宗教2世迷いながら生きる~」を、5月10日に「逆転人生」(NHK総合)が「宗教2世親に束縛された人生からの脱出」を放映した。5月28日には「かんさい熱視線」(NHK総合)が「私たち"宗教2世"見過ごされてきた苦悩」を放映し、私も自助グループ主催者として出演した。この番組は関西ローカルなのだが、好評を受けて6月17日には全国ネットで再放送された。11月12日には「ねほりんぱほりん」(Eテレ)が「親が"神様"を名乗る人」を放映した。現在、宗教2世問題は、さらに注目を集めつつある。

(続きは『中央公論』2022年2月号で)



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横道誠(京都府立大学文学部准教授)
〔よこみちまこと〕
1979年大阪市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程研究指導認定退学。専門は文学・当事者研究。著書に『みんな水の中』『唯が行く!』(近刊)など、共著に『はじまりが見える世界の神話』『神話と昔話・その他』など。
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