政策に対する効果検証
ネットは「死にたい」思いを可視化する。可視化された「死にたい」が人々を結びつけることによって、ネット心中や嘱託殺人などが生じてしまっている。一方で、その可視化された「死にたい」はデータとして活用され、これまでにない新しい、より合目的的な自殺予防活動が展開される素地にもなっている。
つまり、コミュニケーションのための道具であるネットは、使い方次第で毒にも薬にもなり得るパルマコン(ファルマコン、Pharmakon)である。睡眠薬は眠りを誘発することで我々の生活に役立つが、これは用法・用量を守って適切に使用する限りにおいてだ。同じ睡眠薬であっても使い方を間違えれば(例えば過量服薬)、我々の身体に致死的なダメージを与えることももちろん可能となる。毒と薬は表裏一体、コインの表と裏であり、切っても切り離せない関係にある。
では、このパルマコンとしてのネットを毒ではなく薬として機能させるためにはどうすれば良いのだろうか。答えは単純であり、ネット(を活用した自殺予防政策)の機能をきちんと検証した上で、それが薬として機能していることを継続的に確認していくことだ。薬が、治験によって効果が検証された上で保険適用になり、主治医のもとで患者に適切に処方され、その治療過程が継続的にモニタリングされていくように、である。