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本郷和人 源頼朝が「軍事的天才」弟・義経を追討することになったワケ。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』キーパーソン源義経の「失敗」

東京大学史料編纂所・本郷和人が分析<前編>
本郷和人
義経のやらかした失敗とは?
NHKにて放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(総合、日曜午後8時ほか)。平安末から鎌倉前期を舞台に、小栗旬さん演じる北条義時、大泉洋さん演じる源頼朝ら、権力の座を巡る武士たちの駆け引きが三谷幸喜さんの脚本で巧みに描かれ、盛り上がりをみせている。

3月13日放送の第10回「根拠なき自信」では、頼朝らが平家の追討軍を退けた一方、松平健さん演じる平清盛は都を京へ戻すことを決断。田中泯さん演じる藤原秀衡が、その様子を奥州からうかがう……といった内容が予定されているが、こうした中でキーマンになりそうなのが、菅田将暉さん演じる源義経だ。兄・頼朝を助けるため、奥州から鎌倉へ向かう途中で獲物の取り合いとなった男を卑劣な手段で殺害するなど、これまでのドラマで描かれたような爽やかな義経像と異なる姿がすでに垣間見え、話題を博している。

その義経、史実では打倒平家の過程で活躍を見せるも、最後には頼朝から追討を受けて、非業の死を遂げることに。その原因として「義経のある種の失敗があった」と、新刊『「合戦」の日本史』も話題の東京大学史料編纂所・本郷和人氏は語る――。

頼朝の怒りを買った「軍事的天才」義経

源義経の失敗。なぜこの稀代の軍事的天才は、兄から追討を受けることになってしまったのでしょうか?

ご存じのように1185年、平家は壇ノ浦で滅びます。そのときに大きな働きを示したのが源義経であったことは言うまでもない。

源義経は「奇襲戦」を軍事に持ち込んだ人です。

それまでは必ず、お互いに面と向かって「やあやあ、我こそは」と名乗りをあげて、正々堂々戦うことが普通だった。武士たちも自分はこういうものである、ということをわざわざ名乗り、そうして「俺たちは命を懸けて戦うにふさわしい両者である」ということを理解し合ったうえで戦っていたのです。

しかし義経は、そんな名乗りなんて上げず、いきなり襲いかかる。そういう意味で言うとならずものの戦法というか、行儀の悪い戦法をあえて取り入れ、それで次から次へと戦いに勝利するわけです。

そうした義経ですが、彼が源氏にとって大変な功労者であることは間違いない。戦争のやり方を根本から変えてしまったという意味で言うと、武士社会の功労者でもあります。しかし、その彼がなぜ頼朝の怒りを買ってしまったのでしょうか。

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