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「SLAM DUNK」が中国を席巻したのも今は昔。北京大生が「日本アニメは衰退」と書くのは必然だ

北京大学准教授が伝える「中国人の日本観」(前編)
古市雅子(北京大学准教授)

日本を垣間見る窓口になったサブカル

2010年代前半の日中関係が冷え切っていた時代にも、サブカルチャーの影響力は両国の関係に左右されることがなかった。2012年には日本の尖閣諸島国有化をきっかけに、一部が暴徒化した大規模な反日デモが起きたが、国際交流基金の調査によると、その年に、中国における日本語学習者数が過去最高、また世界一位を記録し、それからずっと一位の座を維持している。

しかし、サブカルのおかげで日本を好きな若者が増えたと思うのは、あまりに短絡的である。人口14億の中国では一人ひとりの考え方は日本以上に多様である。

「政治に関心はない。日本のアニメはおもしろいから好き」と言う中国人もいれば、「けれど家族には言いにくい」と言う人、「アニメはいいが、政治、歴史観においては日本に問題があると考える」と言う人もいる。「アニメがおもしろいから、日本が好き」と率直に言う人もいれば、「アニメなんて子供の見るもの」「文化的な侵略を受けているのではないか」と言う人も数多く存在する。日本に対する見方は、その時の国内世論にも大きく影響される。

日中関係が悪化すると、偏った報道で得た知識と先入観で目が曇り、リアルな日本の姿が見えにくくなる。ある中国人学生が「日本に対する考え方を聞けば、その人のIQがわかる」と発言し、感心したことがある。

一方、そんな日中の関係悪化時でも確実に言えることは、サブカルが、よりリアルな日本に触れられる、実体としての日本が垣間見られる数少ない窓口になっていたことである。

そのため、サブカルに興味がない人の中には日本のことをよく知らない人も多かった。通っていたスポーツジムのインストラクターに、「日本って島なんだ! それでどこにあるの?」と言われたことがある。日本はかつて中国を侵略した国だということはわかっているけれど、具体的なイメージは何もない。そんな人も多いのである。

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