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岡田憲治 みんなが不幸せになるPTAって間違っていませんか?【著者に聞く】

岡田憲治
『政治学者、PTA会長になる』岡田憲治著(毎日新聞出版)

――3年間務めた小学校のPTA会長の体験をもとに本を出されたわけですが、読者からの反響はどうですか?

 たくさんありますね。いまこの瞬間も、全国のPTAママパパたちが理不尽な「強制ボランティア」という謎の仕事をやらされています。現に今日も、友人から「自分の妹が病気で入学式を欠席したら、勝手にPTA役員にさせられた。そんなやり方許されるんですか」というメッセージが来ました。もちろん許されません。

 任意団体が人に命令する権利なんてないんですよ、本当は。しかし実際は、自動的に入会させられて、役員を押しつけられ、ボランティアなのに評価される。しかも会合は平日昼間という専業主婦モデルです。

――しかし、楽しくて負担の少ないPTAにしようと提案しても、最初は全くうまくいかなかったようですね。

 新役員内定の顔合わせのときに、現役員が、選考委員会に「どうして候補者を教えなかったのか」と詰め寄っているのを見て、これはおかしい、「選考委員会がなんで独立委員会なのかわかってないな」と思いました。選考委員会が独立の権限を持っていないと、力のある役員が自分のお気に入りばかり集めてしまうからですよね。そんなことは、民主主義について少しでも考えたことがある人だったら常識だと思っていたのです。

 でも、僕が「そもそも論」を言っても、みんな「は?」という感じなんですよ。正論だけ言ってもダメ。本当は、そこで丁寧に心を開く説明をしなくてはいけなかったのに、そのときの僕はそれがわかっていなかった。

 その後も、不要だと思った行事や作業について、「これは無駄だからやめよう。みんながこんなに不幸せになるなんて間違ってますよ」と配慮なく指摘していったんです。でも、そうするとママたちは、「私は結局、間違ってたんだ」とますます心を閉ざしてしまった。みんな、これまでずっとやってきたからそれでいいと思っている。自分たちの活動が地域を支えている自負もある。それなのに、あの政治学者は何をプリプリ怒っているのか。感じ悪い(笑)。僕と会長補佐の男性は、役員会で孤立してしまいました。

――失敗に気づいてからはどのように方向転換したのですか?

 本に詳しく書いたのですが、どうして忖度しちゃうのか、本当は何を恐れているのか、きちんと話を聞いていくことにしました。例えば、負担が大きかった地域の会合はいきなりやめず、発展的解消に。言いづらいなら俺が言ってやるよ、と一つひとつ具体的に解決していったんです。

 また、役員会は原則月1回、土曜登校日の午前中にやることにしました。それまでは平日の昼間にだらだらやっていたけど、それではオフィスワーカーはとてもじゃないけど参加できないからです。重要な議決がなければ役員会はメールベースでもOK。忙しかったり、子どもの具合が悪かったりしたら休んでいい。そう決めたら、翌年には男性役員が5人に増えました。みんなやりたくないわけじゃない。自分ができる仕様になっていないと思われていただけなのです。

――みんなやめたいと思っているのに前例踏襲で続けていること......あらゆる組織にありそうです。(笑)

 この本を読んだ人から、「これ、PTAの本かと思ったら、うちの会社だ」「うちのNPOのことだ」という反応が返ってきました。そうなんです。

 題材はPTAですが、この本で書いたのは、僕たち、一人ひとりは脆弱で力のない人間が、みんなと協力しながら死ぬまで楽しく生きるための生活技法です。自治という政治。そういう意味で、僕がこれまでに出してきた政治学の本と、言っていることは同じなのです。

 政治とは、ご高説を垂れるのではなく、具体的に何がみんなを不幸にしているかを見極めて仲間を作っていくこと。だから、僕は立憲民主党の人はみんなPTA会長やればいいと思うんですよ。(笑)


(『中央公論』2022年6月号より)



岡田憲治
〔おかだけんじ〕
1962年東京都生まれ。専修大学法学部教授。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得修了。専門は政治学。『権利としてのデモクラシー』『なぜリベラルは敗け続けるのか』など著書多数。二児の父。
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