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森永真弓 インターネットとビジネスの歴史を振り返って【著者に聞く】

森永真弓
『欲望で捉えるデジタルマーケティング史』森永真弓著(太田出版)

――本書は書名通り、「欲望」をキーワードにしてデジタルマーケティングの数十年を振り返る野心的な試みです。森永さんは、そもそもインターネットとは縁が深かったのでしょうか。

 私は1995年に千葉大学工学部に入りました。千葉大学は学生がインターネット使い放題という、当時としては恵まれた環境で、色々と触っているうちにどんどん面白く感じていきましたね。

 インターネットに関わる仕事をしたいと思い、卒業後は通信会社のNTTに就職しました。私はデザインを扱う学科だったこともあり、企画やコミュニケーションを担当するのかなと漠然と思っていたのですが、工学部出身ということで技術に関する業務の担当でした。システムやネットワークを設計したり、得意先の天井裏で回線を這わせたりとかもしました。(笑)

 もうちょっと違う仕事もやりたいなと思っていたところ、2000年代に入ってインターネットビジネスがバブルのように盛り上がり、人材募集も増えだしたんです。その頃に博報堂も募集をしていたので転職しました。

 インターネットビジネスの黎明期だったため変化が激しく、その動きにともなって組織変更や異動なども多かったです。結果として、コンテンツビジネスやプロモーションなど、多様な領域に接することができました。

――デジタルマーケティングの軌跡を90年代後半から現在にいたるまで俯瞰してみて、何を感じましたか。

 ここ30年くらいの話なので、そろそろ歴史を振り返って確認するにはよい時期だったのかもしれないと感じています。あと、人材流動性の高い業界ということもあって、長く見ている人が意外に少ないんですよね。たとえば、パソコンのインターネットに詳しい人でも、携帯電話の方で盛り上がっていた「前略プロフィール」や「モバゲータウン」については知識がないとか。そういう意味では、色々な分野を渡り歩いた自分は運がよかったし、こうして一冊にまとめる意味もあったのだろうと思います。

――本書は、歴史の潮流を巧みに示す一方で、ご自身のスタンスはあまり前面に出さず、禁欲的な印象を受けました。今のインターネット界隈にはどうなってほしいとお考えですか。

 一番いいのはビジネスとカルチャーのバランスが取れていることだと思っています。でも、どうしてもビジネスに偏りがちで――要は、お金の話の方が欲望に近い分だけ強いんですよね。楽しさや驚きをもたらすカルチャーに向かう欲望も存在するわけですが、ビジネスに比べるとパワーとしてはどうしても弱い。たとえば、最近ではNFTやメタバースに関しても、そのカルチャーより投資対象の面に注目が集まっています。

 それで、行き過ぎたビジネスにカルチャーの側が歯止めをかける動きとしては、炎上くらいしかないという現状があります。「おい、それはダサいぞ」「何をやっているんだ」と突っ込みが入って燃え上がり、そのうち鎮火して、また別のところで炎上し......と、今のところ、このサイクルが繰り返されている気がしています。もちろん前提として、ビジネスがあってこそカルチャーを支えられるわけですが、このあたりはよいバランスを模索したいですね。

――今後取り組みたいお仕事などはありますか。

 今、Z世代の調査をしているのですが、「マスメディア離れが激しく、社会問題への意識が高い」といった一般的なイメージとは乖離するような結果が出てきています。一方でSNSについてアンケートを行うと、同じ「SNSをよく使用する」という回答でも、その使い方の内実は世代によってまったく異なったりします。

 こうした興味深いデータも集まってきているので、それらをアウトプットしたり、勉強会で共有したりしたいですね。インターネットの登場によって、オープン化の波が押し寄せ、広告やメディアも大きく変化したことの意味を考えていきたいです。

(『中央公論』2022年7月号より)

森永真弓
〔もりながまゆみ〕
1976年東京都生まれ。株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所上席研究員。通信会社を経て博報堂に入社し現在にいたる。コンテンツやコミュニケーションのデジタル活用・調査などに従事。WOMマーケティング協議会理事。共著に『グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか?』がある。
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