寺西ジャジューカ 令和4年の佐久間宣行――テレビだけでなくラジオやネットへと越境

寺西ジャジューカ(フリーライター)

局に留まるか、フリーに転身か

 現在、バラエティ界を代表するスタープロデューサーといえば、佐久間のほかにテレビ朝日の加地倫三(りんぞう)(「ロンドンハーツ」「アメトーーク!」の総合演出)、TBSの藤井健太郎(「水曜日のダウンタウン」の総合演出)がいる。ただ、佐久間以外の二人は今もテレビ局に属しているし、加地に関しては20年6月に役員待遇へと昇格した。藤井は自著『悪意とこだわりの演出術』で次のように述べている。

「フリーの番組スタッフは、視聴率が悪くて番組が終わってしまったら食いっぱぐれて無職になってしまう可能性があります。(中略)でも、サラリーマンの僕にはそんなリスクが一切ありません」

 悪い言い方をすると藤井の安定志向が目立つが、退社直前に受けたインタビューで「安定した環境で仕事をしたい」(エン転職「ぼくらの履歴書」21年2月24日)と口にした佐久間も、局の看板があるメリットはよく理解していたはずだ。それなのに、なぜフリーのテレビマンになったのか? 本人はこう説明している。

「一つは、ちょうど管理職になるタイミングだったこと。会社のラインに乗って出世すると、当然ながら自分のことだけに時間を使えなくなります。部下の番組のクオリティーやコンプライアンスをチェックする仕事に追われ、収録現場に行くことさえできなくなってしまう」(『AERA』21年4月12日号)

 一応、佐久間の肩書は「テレビプロデューサー」ということになっているが、実質、彼の仕事は「チーフディレクター」の領分も大きい。つまり、佐久間は現場にこだわったのだ。出世と同時に自身が育てた「めちゃ2イケてるッ!」の現場から離れざるを得なかった元フジテレビの片岡飛鳥(あすか)と同じ道を辿りたくなかった。

 日本の企業では管理職に就かない限り昇給しないケースが多く、能力のある者は肩書に頼らずフリーに転身するという昨今の風潮もある。要するに、佐久間と同様の理由でフリーランスになったテレビマンは少なくない。

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