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寺西ジャジューカ 令和4年の佐久間宣行――テレビだけでなくラジオやネットへと越境

寺西ジャジューカ(フリーライター)

雇用を握る佐久間のタレント化

 今年6月実施の首都圏ラジオ聴取率調査(ビデオリサーチ調べ)によると、佐久間の「オールナイトニッポン0」は同時間帯で全局中首位を獲得している。テレビプロデューサーでありながらラジオスターでもあるのだ。

 佐久間がパーソナリティになった頃、「裏方が表に出てくるな」という声は少なからず耳にした。佐久間自身、テレ東退社以前はラジオで頻繁に「俺、ただのテレビプロデューサーだよ!?」と口にしていたものである。19年10月29日放送の「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)にて、太田光が佐久間に言及している。

「テレ東の『ゴッドタン』のさ、最近調子に乗ってるプロデューサーいるじゃない。佐久間って奴、偉そうにさ。今の劇団ひとりはどうだとか、(オードリーの)若林(正恭(まさやす))はどうだとかさ、偉そうに批評してやがんだよ。裏方は裏方に徹しろよ、お前よ。今、自分のところの現役でやってる芸人のことをさ、とやかく言うなよ。出役か裏方、どっちかにしろバカ野郎。分析すんな、お笑いを」

 実のところ、「裏方だから表に出てはいけない」とされた時代はテレビの歴史上に存在しない。例えば、テリー伊藤もラジオパーソナリティとして名を上げてから露出を増やしたタイプだったし、佐久間のラジオで嫌でも耳につく大魔王のようなガハハ笑いは、ちょっと和田勉(べん)みたいだ。三谷幸喜(みたにこうき)も太田光代(みつよ)も裏方と同時に演者でもあるし、需要があるのならどちらかに絞る必要もない。

 佐久間自身も「タレントを演じる」という域に達しており、自らの状況について、「一言で言うと、"ヤング・テリー伊藤"」と自嘲したこともあった(21年9月28日「はたわらワイド」オンラインLIVE)。「あちこちオードリー」が1周年を迎えた際は、佐久間がモデルになったキーホルダーを発売したほどである。

 ただ、重要なポイントが一つある。脚本家や事務所社長とは違い、佐久間はプロデューサーという役職なのだ。自らが起用したタレントの評価を大っぴらに語る行為は、"雇用される側"の芸人からするとデリケートな光景に映りかねない。佐久間の嗜好でタレントの仕事が増えたり減ったりする現象が起こり得るからだ(事実、佐久間は「雇用を握る」というパワーワードを口にし、ラジオで笑いを取っていた)。

 それが太田の目には危うく映ってしまう。裏方の活動をほぼリタイアした後にタレント業を本格化させたテリー伊藤と違い、佐久間は今も現役バリバリのプロデューサーだ。東野幸治は、佐久間の将来についてこんな持論を述べたことがある。

「このまま佐久間さんが上がっていったときの一番のゴールって、俺、大橋巨泉さんだと思うんですよ。巨泉さんって、(ビート)たけしさんに『おい、たけし』とか、石坂浩二さんに『へいちゃん』って言うじゃないですか。普通、フリーのプロデューサーで表舞台に出る人は、芸人を"さん付け""君付け"するんですけど、佐久間さんだけは呼び捨て(愛称呼び)にするんですよ。巨泉さん、いけますよ! 若林に「若ちゃんさあ、あの番組つまんねーな」とか(笑)」(ニッポン放送「佐久間宣行の東京ドリームエンターテインメント」22年6月13日放送)

 現役プロデューサーがもし巨泉みたいになったら、いろいろな関係性が可視化されてちょっと生々しい。おそらく、佐久間に他意はないはずだ。プロデューサーとして面白い番組が撮れたから、広くみんなに見てもらいたい。だから自らが「出役」となり、コンテンツを周知する手段として演者を"批評"した。そう考えると、「タレント・佐久間宣行」は佐久間の"誠実さ"を支点としたバランスの上に成り立っている。


(続きは『中央公論』2022年11月号で)

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寺西ジャジューカ(フリーライター)
〔てらにしじゃじゅーか〕
1978年東京都生まれ。数年間の異業界での活動を経てライターに転身。得意分野は芸能、(昔の)プロレス、音楽、ドラマ評。『証言UWF』『証言長州力』でも執筆。
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