堀元 見 流行りのビジネス書と「論破」ブームが生み出す不毛地帯

堀元 見(作家・YouTuber)

やたらに似ているビジネス書

──著書によれば、2016年以降のビジネス書を中心に100冊読まれたとのことですが、読み終えてみての率直な感想はいかがですか。


 まず似ている本が多くてつらい。前書きも似通っている本だらけです。「私はとんでもない落ちこぼれだったけど、○○を身につけることで、こんなに成功しました。あなたにも必ずできます──」みたいなノリですね。

 あと、人工知能に仕事を取られてしまうぞ、という煽りもよく目にしました。何回この話を読まされるんだ、と(笑)。そして、人工知能に駆逐されたくなければ○○を磨くべき、という内容で1章分くらい話を引っ張ったりするんですよ。人工知能に代替されないためには、「祈れ」と書いてある本までありましたね。


──似たパターンが多い、と。


 そして、何を書いてもいいんだなと思いました。たとえば『超雑談力』(五百田達成(いおたたつなり)著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、「この間、ラーメン屋のAに初めて行ったんですよ」「こってり系、好きなんですね?」「無性に食べたくなって」「醤油系もいいですよねー」みたいな会話が「理想の会話」として紹介されています。本当に? って思いますよね。つまらない話だと感じるのが、世間一般の感覚だと思うのですが、それが推奨されているわけで、こりゃ何でもありだな、と。

 僕は主にインターネットで記事を書いてきましたが、ネット記事では一定水準に達しているものは、ある程度はウケて読まれます。もちろん、読まれる記事がいい記事とは限りませんし、対立を煽ったり極端なことを言って炎上させたりする、PV(ページビュー)集めのための記事もあります。ただ、ある程度いいものを作れば、5万PVくらいの数字はついてくるという実感があるんです。

 それに対して書籍は、編集者などのチェックもあり、読者もお金を払うわけですから、ネットの駄目な部分は改善されているのだろうと思いきや、そんなことは全くなかった。実はこの本を書くまでは、もうちょっと出版社のモラルを信じていたんですよ。でもビジネス書を読み漁ってみると、自浄作用が全く働いていないなと思いました。『超雑談力』は10万部以上も売れているんですよね。こういった本が売れるのかー、と。それにもびっくりしました。


──不思議ですね。本には多くの人がかかわり、読者もお金を払っているのに、なぜそんな状況なのか。


 これは今思いついた仮説ですが、ふらっと本屋に入った人にいかに買わせるのかが出版では重要であり、コンテンツ自体の質よりも、第一印象で買おうと思わせるポジショニングのほうが大切なのかもしれませんね。

 一方で、ネットでは、基本的にコンテンツを読んでからSNSでシェアするので、質が高いものがウケやすい。だから、ネットでウケているもののほうが、書店で売れている本よりも質が良くなるのかもしれないですね。

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