新書大賞受賞・千葉雅也 人々がバラバラになるのがやむをえなかったから「現代思想」はその理論化を試みた。「共」の可能性は、徹底的に既成の秩序を疑った先で考え直すことができる

現代思想入門
千葉雅也
「現代思想には相対主義的な面がありつつも、みんなバラバラでいいと言っているわけではない」と千葉さんは説きます
1年間に刊行された新書から、有識者、書店員、各社新書編集部らに投票してもらい、その年「最高の一冊」を選ぶ「新書大賞」。2021年12月から22年11月に刊行された1200点以上の新書を対象とした「新書大賞2023」の結果が23年2月10日に発表され、『現代思想入門』が大賞に輝いた。「現代思想の真髄をかつてない仕方で書き尽くした『入門書』の決定版」とうたった同書はベストセラーとなり、7刷13万部(電子含む)と、版を重ねている。同書から「『現代思想入門』とはどんな本か」について記した箇所を抜粋・編集の上で紹介する。

「ポスト構造主義」とは

「ポスト構造主義」という言い方ですが、これはデリダやドゥルーズらをひと括りにして言うときに使われるものです。

「ポスト」とは「後」という意味で、「構造主義の後に続く思想」ということになります。ただ、本人たちがそう自称したわけではなく、この呼称に対しては批判もあります。ここではとりあえず、デリダらを括るためのフォルダとして、中立的に使うことにさせてください。

ポスト構造主義については、「ポストモダニズム」、「ポストモダン思想」という言い方もされたりしますが、こちらは悪い意味で言われることもあるので、あまり積極的に使いたくないものです。ポストモダン、すなわち「近代の後」と言われるときには、一九七〇、八〇年代以降が想定されることが多く、その時期がポスト構造主義の時代です。

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