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不評だった映画のタイトル、『対話と構造』から『私のはなし 部落のはなし』に変えるまで。「部落問題」を描くために必要だったこととは?

満若勇咲監督×瀬尾夏美さん 『「私のはなし 部落のはなし」の話』刊行記念トークセッション
取材文・撮影=朝山実
(左)瀬尾夏美さん(右)満若勇咲監督(シネマ・チュプキ・タバタにて。撮影=朝山実)
2023年5月のGW、東京・田端の小さな映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」で「私のはなし 部落のはなし」再上映に併せて催された7日連続のトークセッション。満若勇咲監督が掲げたテーマは「ドキュメンタリーを盛り上げたい」。そのうちの3回のレポートを掲載していきます。
第3回のゲストは、作家の瀬尾夏美さん(『二重のまち/交代地のうた』)。

「声」を届けたい

満若 瀬尾さんとは初対面なんですが、まず自己紹介からお願いできますか。

瀬尾 わたしは東日本大震災後に、ボランティアをきっかけに陸前高田に引っ越し、震災後の風景と「語り」の記録をまとめてきました。わたし自身は絵と文章を書き、映像作家の小森はるかさんと一緒に作品をつくることもあります。現在は東京に住んでいまして、きょう、映画『私のはなし 部落のはなし』をあらためて拝見して、一人ひとりの人間のうつくしい姿、声が撮られていると感じました。

わたしは震災以降、災禍の記憶をどうやって伝えていくのか、ということを考えてきました。再び同じような被害にあわないために、という側面もあるんですが、被災を経験し、大きな傷を負った状態にいる人たちが孤立しないように、その人たちの「声」を伝えたいと思って活動してきたんですね。
一方で、この「部落」の問題は土地と結びついたものであって、また、当事者の間にも「寝た子を起こすな」といった議論があると聞き、伝え手として何ができるのだろうかと考えながら観ていました。

そのあたり、監督として悩まれながらつくられたかと思います。

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