中国の若者は日本をどう見ているか?

中島 恵 (ジャーナリスト)

 中国漁船衝突事件を巡り日中関係が悪化している。私は九月八日まで北京でエリートたちの対日観を取材していたが、帰国直前に事件は起きた。

 九月二十三日朝、エスカレートしつつある事件について、北京の張成(仮名、二十一歳)に電話で現地の様子を聞いた。

「こちらの報道は日本ほど大きくないので、一般人の関心はまだ薄いと思います。私は日本が国内法で対処したことで、中国も外交問題としたのではないかと思う。でも先日、教授陣は上から『(微妙な時期だけに)対日問題を起こさないように』と注意を受けたと聞きました。鎮静化させたい意向なのだと感じました」

 日本に留学予定の呉傑(仮名、二十八歳)は事件後に日系の百貨店で買い物をしていたとき、店員から「日本に住むんですか。うわー、いいな」と羨望のまなざしで見られたといいつつ「今回の件は中国政府の外交的な判断。中国を甘く見るなというパフォーマンスかも」という。

 ところがその後、フジタ社員の拘束や船長の釈放、中国側が謝罪と賠償要求を日本に突きつけたことなどによって事件は深刻化。二十七日に日系企業に勤務する鄭一芝(仮名、二十七歳)に連絡すると、彼女は事態をより重く受け止めていた。

「こちらはだんだん微妙な空気になってきています。この案件は領有権がどちらにあるのか、まだ本当に最終的な決着が着いていない問題だと私は思います。中国人としての愛国心かもしれませんが、船長が逮捕されたときは、正直言って怒りを感じました」

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