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北朝鮮、中国、ロシアにあざ笑われる日本

日米同盟を踏みにじった民主党の大罪
石破茂(自民党・政務調査会長)

 北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃し、尖閣沖では中国漁船衝突事件が発生。稚拙な民主党政権の対応をあざ笑うかのようにロシア大統領は北方領土を訪問した。日本が何もできやしないと思うからこそ、周辺諸国は平気でこうした行動に出るのだ。なぜかといえば、民主党政権が普天間をめぐり、日米同盟に亀裂を入れたからである。東アジアにおける日本の立ち位置は、ますます不確かなものになりかねない。戦略もない、知恵もない、そんな民主党に外交などまかせられない。

「読み切って」いる北朝鮮

 十一月二十三日、北朝鮮が朝鮮戦争休戦後、初めて韓国の陸上の目標を攻撃した。突然のことではあったが、「近々、必ず何かが起こる」と考え、そう発言してきた私にとって、さしたる意外感はなかった。

 一九八三年、あわや時の全斗煥韓国大統領が暗殺されかかった「ラングーン事件」、さらに八七年の大韓航空機爆破事件は、金正日現総書記が、父・日成の後継者として指名、認知されつつあるタイミングで起こった。新指導者に忠誠を誓う儀式なのか何なのかは知らないが、北朝鮮は「代替わり」の時期に、何か事を起こすのである。今回は、それが三月の韓国哨戒艦沈没事件であり、あの砲撃だったということだ。

 ただし、彼らも馬鹿ではない。おそらく、今回の「セレモニー」はここまでであろう。やりすぎれば、今度は自分たちが大怪我をしかねないことぐらいは、分かっているはずだ。裏を返せば、北朝鮮には、ここまでなら大丈夫だろうという「読み」があったのだと思う。哨戒艦沈没事件の時にも、中国が守り抜いてくれた。韓国は有事の軍事指揮権を米軍に委譲しており、全面攻撃との判断はすまい。むろん、今の日本など恐るるに足らずだ。

 北朝鮮の暴走を抑えようと思ったら、鍵を握るのはやはり中国だ。中国の後ろ盾がある限り、指導者が交代して以降も、平気で国際社会に背を向ける行動を取り続ける可能性が高い。

 中国の姿勢を変えさせるためには、日米韓がいっしょになって説得する必要がある。中国だって、あの北朝鮮を守らなければならないのは辛い。さりとて、何かがあった場合の、難民の流入は困る。こうした問題に具体的な対処方法を示し、納得させる以外に道はないと、私は思う。北の核ミサイルが精度を上げ、さらにアメリカ大陸を射程に入れる前に、ぜひともこの「合意」を取り付けておく必要がある。

 それができる大前提として、強固な日米同盟の存在が不可欠。これについては後述する。

尖閣事件はなぜ起きたのか

 尖閣沖での中国漁船衝突事件が起こったのは、九月七日だった。八?九月には、数多くの台風が東シナ海を通過する。普通は、わざわざ漁になどやって来ない時期なのだ。にもかかわらず今年に限って「出漁」し、なおかつ日本の巡視船に体当たりまでしてみせた。そこに何らかの「国家意思」が伴っていたのではないかと考えるのは、うがちすぎであろうか。

 あくまでも個人的な推論だと断らせていただくが、中国は日本という国を「試した」のではないかという気がして、仕方ないのだ。政権交代を果たした直後の総理大臣が、普天間基地移設につき「国外、最低でも沖縄県外」と表明し、十数年かけて築いた合意を踏みにじった挙げ句、「学べば学ぶほど在沖海兵隊の持つ抑止力の重要性が分かった」などと、平気で言い放つ。かと思えば、政権党の陰の実力者と思しき人物が、国会議員を一四〇人も引き連れて訪中し、「私は人民解放軍の、日本における野戦司令官であります」などと上機嫌で話す。中国でなくとも、「あの国はいったいどうなっているのだ」と思って当然である。

 ならば、党の代表選で国政が疎かになっている時期を狙って、ちょっと仕掛けてみようか。今、政権を揺さぶっても、少なくとも損になることはないだろう......。そんな思惑だったのでは、と思えるのだ。

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