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ウクライナから見える世界の構図

深層NEWSの核心
BS日テレキャスター 玉井忠幸/近藤和行

 ロシアによるクリミア編入などウクライナをめぐる問題は、関係各国の利害や思惑が交錯し、現在の世界の構図を浮き彫りにした。ウクライナ問題で世界はどう動いたのか。これまでのゲストの発言を踏まえて二人のキャスターが語った。

◆米国の衰退とEUの対応

「米国は経済制裁カードは切るだろうが、軍事介入は予算や議会の合意形成でとてもできない。プーチン大統領は読み切っている。(ロシアに対し)容認か制裁か重要な局面になる」=日本総合研究所の寺島実郎理事長(三月十二日)

玉井 ロシアが強硬姿勢に出た背景には、米国の相対的な力の低下があります。昨年、シリアの化学兵器の問題でオバマ大統領は一時軍事介入を決断しましたが、ロシアの調停を受け入れて攻撃を撤回した。その際、オバマ大統領は国内向けの演説で「米国は世界の警察官ではない。すべての悪を正すのは我々の手に余るからだ」と語っています。ロシアを始め世界の国々には、米国はもう世界の警察官の役割を果たすことができない国になったとの見方が広がった。ロシアの行動はそうした米国の足元を見たものと言えます。

近藤 EUのロシアに対する姿勢も影響していると思います。EUにはロシアへの強硬姿勢を好まない国も多いからです。二〇〇九年にギリシャから始まった欧州財政・金融危機への対応を見ても、EU各国は同一歩調を取れなかった。欧州は問題が発生したときに一致して対応できる組織体ではないということを示したのです。このため、ウクライナ問題でたとえオバマ大統領がロシアに強硬姿勢をとっても欧州は一致して米国に歩調を合わせることはできないだろうと、ロシアが判断した可能性はあるでしょうね。

玉井 EUは天然ガスの消費量の約三割をロシアに依存しています。一方、ロシアにとってEUは大事なマーケットです。もし、天然ガスの供給が止まればEU、ロシア双方にとって打撃になります。G8サミット(主要国首脳会議)への参加を停止されてもロシアが世界経済の枠組みの中にあることは間違いありません。米国、EUもロシアもそれを分かった上で、どちらが先に降りるかという外交戦を展開しているということでしょう。ウクライナ問題が起きてから、日米、日中外交を取り上げた番組でもゲストはこの問題に触れていました。共通しているのは、ロシアのG8サミットへの参加停止で、東西冷戦後に築かれた国際社会の構図が崩れたという見方です。

◆クリミア編入は大きな負担

「(ウクライナ東部を編入する可能性については)それだけの経済的余裕がロシアにはない。クリミアとは全く状況が違う」=慶應大学の廣瀬陽子准教授(四月二十三日)

玉井 ロシアはクリミアを特別な土地だとみている。もともとロシア共和国の一部でしたが、ソ連時代にウクライナ共和国に移管されました。クリミアは、ロシア黒海艦隊が母港とする戦略上重要な地域であるのに加え、ロシア人には「失った領土の回復」という意識があるようです。一方で、ロシアはクリミアの経済を支えるため、大きな財政負担を抱え込んだことになります。廣瀬さんが言っているように、ロシアもこれ以上領土を編入して負担を増やす余裕はないでしょう。最終的には欧米もロシアもウクライナを中立地帯のような形にして問題を軟着陸させたいのではないでしょうか。

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