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ウクライナから見える世界の構図

深層NEWSの核心
BS日テレキャスター 玉井忠幸/近藤和行

近藤 問題がクリミア編入にとどまるなら事態は収束に向かうという見方はある。確かにロシアの経済はそれほど好調とは言えず、財政的に余計な負担を抱えたくないことは事実でしょう。ただ、ウクライナは、西部は農業地帯ですが、東部は軍需産業などが集積しておりロシアにとっては重要な地域。海外のメディアには、ロシアは東部で少しずつ事態を進行させ、欧米がどこまで許容できるかを見極めているのではないかとの論調も見られます。

玉井 いずれにしても、ロシアのクリミア編入は力による現状変更であり、決して許されることではありません。

◆重要なロシアとのパイプ

「(中国は)ロシアの敵になりたくない一方、自国内の少数民族が独立されては困るという矛盾した気持ちを持っている」=東京福祉大学国際交流センターの遠藤誉センター長(三月二十六日)

近藤 中国にとってクリミアの編入が大きな関心事であることは間違いないですね。中国は国内にチベットや新疆ウイグルなどの民族問題を抱えている。住民投票の結果を理由にクリミアを編入してしまったロシアを支持することは、中国国内の民族問題に火をつけかねません。一方でロシアへの配慮もあり、中国はG7に同調することもできない。ロシアに対する米国の出方をじっと見ている状況でしょう。

玉井 米国は中国を巻き込みたいと考えています。中国はしたたかな国です。新型の「大国関係」を目指す中国は、今の状況を利用して米国に恩を売りたいとも考えているはず。そううまくいくとは思えませんが。

近藤 日本が警戒すべきなのは中国とロシアの関係でしょう。中国にとってロシアに接近することによる経済的な恩恵はそれほど多くありません。一方、ロシアは国境を接している中国が軍事的にも経済的にも台頭してきていることで、かねてから抱いている警戒感をますます高めています。ただ、ウクライナ問題が起きたことで、ロシアにとって中国が大きなカードになっていることは間違いありません。両国の接近は日本にとって決してプラスには働かないでしょう。ロシアからすれば日本は経済的に重要な国です。日本はロシアに毅然とした姿勢を見せつつも、中国を見据えて、これまでの日ロ関係を保つ努力が必要になります。

玉井 そうですね。安倍首相はプーチン大統領と五回も首脳会談を行い、信頼関係を築いてきましたが、ロシアに対して言うことは言っている。ウクライナで力による現状変更を認めたら、尖閣諸島や南シナ海での中国の行動も認めることになる。毅然として糾弾するのが日本外交の大前提であり、G7の一員としてロシアへの制裁措置に加わったのは当然です。ただ、ロシアを過度に追いつめるのはG7全体として得策ではない。欧米各国と足並みを揃えつつ、日本がロシアとの対話のパイプを維持することは、日本の外交力の向上につながります。首脳同士の信頼関係を生かすのはこの点においてです。絡み合う複雑な力学をどう見極めるか、安倍政権の外交力が問われますね。

構成/読売新聞調査研究本部 吉山一輝

〔『中央公論』20147月号より〕

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