誰のための授業料無償化か
小林哲夫(教育ジャーナリスト)

(『中央公論』2025年6月号より抜粋)
2025年4月より、新たな制度で公立高校の授業料無償化の対象が広がった。正式名称は「高等学校等就学支援金制度」であり、あくまでも「支援」だ。
しかし、「無償化」が強調されてしまい、公立私立問わずどんな高校に通っても学費がタダになると受け止められ、実情が見えにくくなっている。同制度をすこし整理しよう。
これまで、世帯年収910万円未満の家庭には、公立私立いずれも年間11万8800円の授業料支援が行われてきた。これは公立の授業料に相当するので、公立に通う場合は授業料が全額無料となる。世帯年収590万円未満で私立高校に通う場合は、年間最大39万6000円の授業料が支援される。
新しい制度では、25年度から世帯年収910万円の所得制限が撤廃され、公立は誰もが無償化となる。26年度からは私立も所得制限がなくなるとともに、支援額は年間45万7000円に引き上げられる予定だ。私立の授業料がこの金額よりも高ければ、その分は保護者が負担し、低ければ実際の授業料が上限となる。