尖閣防衛、喫緊の課題 渡部恒雄
渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)
米中の激しい応酬
日米2プラス2の二日後の三月十八日、米国のアラスカ州アンカレジで行われたバイデン政権初となる米中両国の外交トップの会談では、冒頭からの激しい応酬がテレビカメラを通して世界に伝えられた。米中ともに、一度は撤収した報道陣のカメラを、それぞれに呼び寄せて、自らの発言を報道させ、世界に発信したほどだ。
ただしその意図は米中でかなり違った。中国側は、習近平国家主席をはじめとする共産党の指導部と国民に対して、米国の「不当」で「無礼」な態度に自らが堂々と反論する姿を見せるためだった。中国メディアは米国に反論する楊潔篪共産党政治局員の「雄姿」をさかんに放送した。
かたや、米国側が意識したカメラの先には、米国民だけではなく、同盟国とパートナー国がいた。中国の国際ルールを無視した行為に脅かされている国家や人々に対して、米国は世界の「ルールに基づく秩序」を守る側に付く、という姿勢を見せたかったはずだ。
ブリンケン国務長官は米中協議の冒頭で、「ルールに基づく秩序に代わる世界は力が正義で、勝者が全てを得ることになり、一段と暴力的で不安定なものになるだろう」と語り、「ルールに基づく秩序」への米国のコミットメントを再確認した。二日前に行われた日米2プラス2で「ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対すること」、「自由かつ適法な通商への支持、航行及び上空飛行の自由並びにその他の適法な海洋の利用を含む国際法の尊重」、さらには「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対」に合意しており、ブリンケン長官の発言には少なくとも日本の意見が反映されている。楊政治局員はこれに対し、米欧諸国が国際世論を代表しているわけではないと反論した。