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尖閣防衛、喫緊の課題 渡部恒雄

渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)

尖閣問題のグローバル化と自由で開かれたインド太平洋構想

 日本は、尖閣諸島への中国の挑戦を日米共通の課題、さらにインド太平洋および世界の秩序維持を、国際社会が守るべきものの一つとして位置付けること、いわば課題のグローバル化に成功した。これは楽な道ではなかった。二〇一二年九月に日本政府が尖閣諸島の三島(魚釣島・北小島・南小島)を民間人から購入したことをきっかけに、中国公船が荒天を除きほぼ毎日、接続水域に入域するようになった。米オバマ政権は、二〇一〇年に日米安保条約の尖閣適用を公言していたとはいえ、当時の多くの米国民および国際社会の意識としては、この問題は日中の領土争いであり、むしろ巻き添えを懸念する論調が多かった。

 しかし、二〇一四年にフィリピン政府が、中国による南シナ海のジョンソン南礁埋め立ての写真を公表して以来、岩礁を埋め立てて領有化するという中国の明確な国連海洋法条約違反と、さらにはその軍事基地化により、一般の米国人や国際世論にも危機感が共有された。

 日本はこの間、「自由で開かれたインド太平洋構想」を打ち出し、オーストラリア、インド、カナダ、欧州、ASEAN諸国など米国の同盟国やパートナー国と協力して、「ルールに基づく秩序の維持」を守るという認識を共有する努力を続けてきた(日韓関係の悪化がなければ韓国もここに入るべき国だったのだが......)。具体的には、①法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着、②国際スタンダードにのっとった「質の高いインフラ」整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求、③海上法執行能力の向上支援、海賊対策、防災、核軍縮・不拡散などを含む平和と安定のための取組、これらを三つの柱として政策を進めてきた(二〇一九年版「外交青書」より)。

 

(『中央公論』2021年5月号より抜粋)

渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)
〔わたなべつねお〕
1963年福島県生まれ。88年東北大学歯学部卒業。95年米・ニュースクール大学修士課程(政治学)修了。同年ワシントンDCのCSIS(戦略国際問題研究所)に入所、2003年上級研究員に。05年帰国、三井物産戦略研究所、東京財団を経て、17年10月より現職。著書に『二〇二五年 米中逆転』『2021年以後の世界秩序』など。
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