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中国の現状変更への試みは容認しない――台湾海峡の安定を注視 岸信夫・防衛大臣

岸信夫(防衛大臣)
岸信夫氏
経済の伸長とともに軍備をますます増強させる中国。日本は、東シナ海などでの領海侵犯を繰り返し覇権拡大の意欲を隠さない中国といかに対峙すべきなのか?
岸信夫・防衛大臣に中国との向き合い方を聞いた。本誌の後半では、台湾有事の備えについても議論している。
(『中央公論』2021年10月号より抜粋)
目次
  1. 透明性を欠いた中国の軍事力強化
  2. サイバー戦にはオールジャパンで対応する

透明性を欠いた中国の軍事力強化

─近年、ますます軍備を増強する中国をどう見ているでしょうか。

 中国は透明性を欠いたまま、継続的に高い水準で国防費を増加させています。核やミサイルの戦力、また海上航空戦力等を中心に軍事力を広範かつ急速に強化しています。また、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域に関する能力強化を行い、ゲームチェンジャーとなる技術開発に注力をしていると理解しています。

─中国は尖閣諸島周辺での日本の領海侵犯を繰り返すなど、権力を拡大する意欲が見て取れます。

 我が国の周辺海域や東シナ海において、中国は力を背景とした一方的な現状変更の試みを継続的に行っています。日本側の抗議にもかかわらず、海軍艦艇の恒常的な活動の下で、中国の海警局に所属する船による尖閣諸島周辺の海域、我が国の領海への侵入が繰り返されています。中国のこのような現状変更の試みは、決して容認できません。さらに、太平洋や日本海においても、その軍事的な活動というものを活発化、拡大化させている。今後もその傾向は続くと考えております。


 今年2月、中国で海警法が施行されました。海警法には海警局による曖昧な武器使用権限、適用海域があり、国際法と整合しない問題があります。これによって我が国を含む関係国の正当な権益が失われてはなりません。


 中国の軍事動向を見ると、急速な作戦遂行能力の強化、また活動の拡大、活発化が進んでいます。こういったものが国防政策や軍事力に関する透明性の不足ということと相まって、我が国を含む地域や国際社会の安全保障の最大の懸念事項になっています。今後とも強い関心を持って、注視をしていく必要があります。

─そうした中国に対して、日本は、また自衛隊はどう向き合うべきでしょうか。

 我が国の防衛政策は、特定の国を対象としたものではありませんが、厳しさを増す安全保障環境の中で、脅威に対する実効的な抑止力、対処力、そして防衛力が質・量ともに必要になります。従来の陸海空の領域に、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を組み合わせることによって、戦闘様相に適応することが死活的に重要になってくると思います。


 日本の防衛力は、現防衛大綱にもあるとおり、全ての領域における能力を融合させ、その相乗効果で全体の能力を増幅させる領域横断作戦によって我が国の防衛を全うできるものとする必要があります。我が国としては、特に日米間で連携を密にし、今後もさらに我が国を守る体制を強化していきたいというふうに考えています。

─中国の軍備が増強される状況下にあって、日本側も新たな能力を持つべきであるという議論があります。

 以前とは戦い方がかなり変わってきており、複雑化する事態にしっかり対応する必要があると思います。従来からの脅威、懸念に対する守りを固めた上で、新たな領域においても優位性を確保していく。これが重要だと考えています。

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