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細谷雄一 19世紀型の「プーチンの戦争」に対し、ウクライナは21世紀型の「ゼレンスキーの戦争」を戦っている

細谷雄一(慶應義塾大学教授)
写真提供:photo AC
 プーチンは19世紀的な世界に生きているのではないか? 細谷雄一・慶應義塾大学教授が、ウクライナ戦争を、世界史の潮流のなかに位置づけ、国際秩序の将来を展望する。
(『中央公論』2022年5月号より抜粋)
目次
  1. 世界史の潮流のなかにこの戦争を位置づける
  2. 19世紀型プーチンの戦争
  3. 21世紀型ゼレンスキーの戦争

世界史の潮流のなかにこの戦争を位置づける

 ウクライナ戦争に関連して連日届く重い報道は、われわれの精神に巨大な傷跡を残している。あまりにも悲惨な映像や、ウクライナの人々の苛酷な生活を知り、心が穏やかでないという人も多いと思う。確かに第二次世界大戦後の世界で、われわれは多くの悲惨な戦争を見てきた。だが、今回の戦争は交戦国のいずれも欧州国家であり、また兵力規模が85万人のロシアと20万人のウクライナという近代国家どうしの戦争ということもあり、これまでにない巨大な破壊をもたらしている。

 映像や画像が数多くSNSで流れ、あたかもわれわれがその戦場にいてわれわれの家族や友人が戦争に巻き込まれているような感覚があるという意味で、やはりこれまでの数多くの戦争とは異なる身近な印象を持つ人が多いのではないか。

 さらには、化学兵器や核兵器まで使用される可能性が高いということで、国際社会はこれまでにない緊張感や危機感に覆われている。まさか21世紀の世界で、このような野蛮で残酷な戦争の映像を見ることになるとは、多くの者が考えていなかったのではないか。

 現段階で、どのような交渉が行われ、この戦争がどのような和平に帰結するのかを予測するのは難しい。他方で戦争終結と戦後秩序の形成はつねに深く結びついて連動する。だとすれば、現在戦争が進行するなかで、どのような戦後秩序が形成され、それがどのように国際秩序に影響を及ぼすことになるかを考えることにも、一定の意味があるだろう。

 未来を見通し、予言することはできない。だが、長期的な世界史の潮流のなかにこのウクライナ戦争を位置づけることで、国際秩序の変容についてある程度将来を展望することができるかもしれない。

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