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細谷雄一 19世紀型の「プーチンの戦争」に対し、ウクライナは21世紀型の「ゼレンスキーの戦争」を戦っている

細谷雄一(慶應義塾大学教授)

19世紀型プーチンの戦争

 プーチン大統領のロシアは、19世紀的な国際秩序観に基づいて戦争を行っているといえるのではないか。当初多くの専門家が、ロシアが、軍事的手段と非軍事的手段を統合して、われわれの生活空間をも戦場にするような、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長の提唱するいわゆる「ゲラシモフ・ドクトリン」に基づいた軍事作戦をウクライナで展開し、戦場を支配すると考えていた。そして、それは、サイバー攻撃や、影響工作、電磁波攻撃、プロパガンダなどを組み合わせた、非対称戦争となるであろうと想定されていた。

 ところが実際にはロシアは古い戦争を戦い、ロシア軍とウクライナ軍の双方の地上兵力が衝突するような、19世紀型の戦争を展開している。プーチンは、20世紀のソ連という「超大国」が崩壊したことを悲劇と考えながらも、19世紀的な世界に生きているのではないか。

 19世紀のヨーロッパでは、勢力圏を確立し、大国間で均衡を摸索し、勢力圏を拡大するための戦争を行っていた。

 そのような19世紀的な戦い方をする「プーチンの戦争」に対して、ウクライナは、いわば正面からロシア軍と対峙せず、相手の兵力をある程度自国の奥深くまで誘い込み、後方の補給路を断ち、またゲリラ戦的な戦闘も併用した、非対称戦争を戦っている。

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