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細谷雄一 19世紀型の「プーチンの戦争」に対し、ウクライナは21世紀型の「ゼレンスキーの戦争」を戦っている

細谷雄一(慶應義塾大学教授)

21世紀型ゼレンスキーの戦争

 ウクライナは、軍事バランス上で圧倒的に不利な立場にありながらも、ゼレンスキー大統領が各国の議会で行うオンラインでの演説に示されるような、人々の心に浸透する「感情と理性(ハーツ・アンド・マインズ)」をめぐる戦いで優位に立っている。また、トルコ製の軍用ドローンのバイラクタルや、アメリカ製の携帯型対戦車砲のジャベリンを効果的に多用して、戦場でも有効に抗戦を続け、いわば21世紀型の「ゼレンスキーの戦争」を戦っている。

 その対比は、両国の指導者の諜報部員出身と俳優出身という違いによっても、きわだっている。もちろんそれだけで戦争に勝利することはできないが、かつての日中戦争での毛沢東や、ベトナム戦争でのホー・チ・ミンのように、「負けない戦争」を戦うウクライナの戦術は、いまのところは戦前の想定をはるかに上回る戦果をもたらし、ロシアによる軍事的制圧から免れている。

(後略)

細谷雄一(慶應義塾大学教授)
〔ほそやゆういち〕
1971年千葉県生まれ。英国バーミンガム大学大学院国際関係学修士号取得。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。著書に『戦後国際秩序とイギリス外交』(サントリー学芸賞)、『倫理的な戦争』(読売・吉野作造賞)、共編著に『新しい地政学』など。

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