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大阪維新の会を待ち構える落とし穴

橋下チルドレンは優秀か無能か
吉富有治(ジャーナリスト)

 小泉チルドレンや小沢チルドレンなど、政界で「チルドレン」と呼ばれる一群がいる。

 ただ、この用語はあまり良い意味では使われない。「親の七光りにすがる者」といった、やや否定的な意味が含まれているからだ。事実、これまでのチルドレンたちのなかには、有名人という理由だけで当選し、大した実績を残さないまま政治家として居座っている者も少なくない。

 大阪ではこの春の統一地方選挙で、いわゆる「橋下チルドレン」と呼ばれる政治家集団が誕生した。はたして彼らもまた、政治的な成果をはたさないまま消え去っていくのだろうか。

 このレポートでは彼らへの取材やアンケート(回収率は府議会七一%、大阪市議会七〇%、堺市議会一〇〇%)を通じて、政治家としての可能性や、将来的な問題点を浮かび上がらせようと試みたものである。

チルドレン議員の志望動機

 その橋下チルドレンの公募がスタートしたのは昨年四月のことだった。大阪府と大阪市を再編し、そこに堺市を加え、「大阪都」という巨大都市の完成を夢見る橋下徹知事と首長政党「大阪維新の会」。その目的をはたすためには、大阪府議会と大阪市議会で同会派が過半数を取る必要があり、一人でも多くの候補を集める必要があったのだ。

 一次公認の募集に応募した者は計八〇名。職業もサラリーマンや弁護士、国家公務員、元モデルといった多彩な顔ぶれが目立った。なかには職業安定所と勘違いしているのか、仕事探しの無職もいたが、最終的に四次公認まで計二〇〇名以上の候補志願者が集まった。

 当選したチルドレン議員たちの志望動機は、ほぼどれも同じである。大阪都構想を目指すのは当然として、ほとんどが沈滞する大阪経済、ムダの多い行政や政治への不満、あるいは橋下知事への期待というものだ。チルドレンへのアンケート、最初の設問は「なぜ大阪維新の会から出馬しようと考えたのか」というもので、以下が代表的な回答である。

「既成政党に任せられない。橋下知事、大阪維新の会なら改革は可能だと考えた」(大阪府議 四十代女性)。「大阪府に勤務していて役所のムダを経験。橋下知事になって、それが解消されてきたので、この改革を最もムダが多そうな大阪市政に広めたい」(大阪市議 四十代男性)。「大阪で生まれ育ったが、現在の大阪の活力のなさ、市民のパワーのなさを見ていて、なんとかならないかと考えていた」(大阪市議 二十代男性)。「大阪の今後の発展、繁栄を考えたとき、強いリーダーシップを持った橋下代表が率いる大阪維新の会しかない」(堺市議 三十代男性)。

 どのチルドレンたちも志望の動機には政治経済への不満、そして現状打破を目指す強い決意がうかがえた。具体的な政策を訴える議員もいる。元モデルで大阪市議の伊藤良夏さん(三十歳)は「以前から福祉の仕事をしており、市政でも生活保護行政などに関心があった」と語る。

公認を与える選定基準は?

 しかし、公認を与える側の意識は違うと言う関係者がいる。

「公認の基準は、選挙費用を自前で用意できるかどうか。決して人物の善し悪しや論文の内容ではない。結局、当選後の駒としか考えていない」

 これは実際に応募し、公認を得られなかった四十代男性の言葉である。男性の具体的な経歴は書けないが、彼は紛れもなく一流企業に勤めるエリート社員。容姿や話術も決して悪くはなく、選挙戦では有権者の耳目を集める戦いが可能だっただろうと思える人物だ。

 課題論文も見せてもらったが、大阪の現状や問題点、そのための解決策にまで及んだ力作だった。だが、この男性は落ちた。理由は「家庭の事情があって金がなく、選挙費用は出せない」と面接時に語ったからである。実は、同じ理由で公認されなかった候補志願者は大勢いた。これは大阪維新の会に限らず、同じく統一地方選の候補者を公募した自民党大阪府連でも事情は同じだったようだ。

 この点については大阪維新の会の松井一郎幹事長も、公認を与えるための選定基準は人物か論文の内容か、それとも選挙費用が出せるか否かという私の質問に対して、「そのすべてです」と答えている。政党助成金の補助がない維新の会の台所事情は火の車。候補者が四〇〇万円前後の選挙費用を自前で用意できるかは切実な課題のようだ。

見よう見まねの選挙戦

 一方、公認を勝ち取った橋下チルドレンたちは最終的に計一一九名。途中、個人的な理由で二名ほどが公認を辞退したものの、一度にこれほど多くの新人候補が地方議会に挑戦するのは前代未聞のことだろう。

 もっとも、選挙戦では苦戦が予想された。ひとつの選挙区に複数の候補者を立てることで共倒れのリスクがあったり、有権者の関心が東日本大震災の行方に移り、大阪都構想への興味が急速に失われていたからだ。一人区が多い大阪府議会選挙では過半数の獲得はギリギリ。中選挙区の大阪市議会では過半数は不可能、せいぜい一三名(改選前)の第四会派から第二会派が限界だろうと見られていた。

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