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自民、暗雲漂う沖縄、福島知事選 ささやかれる年内解散

永田町政態学

「自民党は連敗モードに入り、そのまま、来春の統一地方選に突入するのではないか」

 そんな観測が永田町で飛び交っている。

 自民、公明両党の推薦候補が敗北した滋賀県知事選(七月十三日投開票)に続き、与野党対決型になりそうな福島(十月二十六日)、沖縄(十一月十六日)の両県知事選でも、自民党の苦戦が見込まれているためだ。

 特に自民党が重視しているのが沖縄だ。日米同盟に突き刺さったトゲとも言われる米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を前進させるためにも、「負けられない選挙」(幹部)と位置づけている。

 しかし、自民党の石破幹事長と党沖縄県連による候補者選びは曲折をたどった。
「現職の仲井真弘多氏で臨みたい」
「どうやって勝つつもりか? このデータを見てくれ」

 七月四日、自民党本部。仲井真氏擁立を説く沖縄県連の西銘恒三郎会長に、石破氏が執拗に「待った」をかけた。その石破氏の手には、党が行った情勢調査のデータの紙があった。内容は仲井真氏が「劣勢」。仲井真氏の対抗馬の翁長雄志・那覇市長が「優勢」だった。
「負け戦はできない」という石破氏の説得に県連は反発。逆に仲井真氏擁立の動きが加速するという皮肉な結果となり、党本部も追随せざるを得なくなった。

 辺野古移設に仲井真氏は容認、翁長氏は反対と対照的な立場で、選挙戦の争点になるのは必至
だ。

 一方、自民党関係者は「仲井真氏支援を決める前、翁長氏陣営と自民党執行部の間で共闘を探る水面下の動きがあった」と打ち明ける。「辺野古移設について、公の場で推進や容認を言わなくていい。ただし、反対と明言しないでほしい」。自民党側の打診に、翁長氏側は最後まで難色を示し、結局、まとまらなかったという。

 翁長氏は、自民党県連幹事長も務めた保守系。多くの保守系の那覇市議が推しているほか、辺野古移設反対の主張に賛同する共産、社民、生活の党などの支援も受ける。ただ、野党側と翁長氏が合意した基本政策で、翁長氏は「辺野古埋め立て承認を撤回する」の文言案を、「埋め立て承認の撤回を求める県民の声を尊重し、辺野古新基地は造らせない」に変更した。保守系支持層に配慮したものだが、野党側には不満の声もあり、「保革共闘」が円滑に進むか、疑問視する向きもある。

 出馬表明している下地幹郎・元郵政改革相も保守系。沖縄県知事選は従来の「保守対革新」の構図が一変。保守分裂選挙となる。ただ、保守系同士でも辺野古移設を巡って互いを激しく批判するなど、早くも過熱気味だ。

 自民党本部が県連をしっかりグリップできていないのは、福島も同じだ。

 党本部では「秋は沖縄知事選に集中したい。福島は汚染土を保管する中間貯蔵施設問題も抱えており、与野党相乗りが望ましい」との声が多かった。しかし、党福島県連は、現職二期目の佐藤雄平知事が「リーダーシップに欠ける」として早々に独自候補擁立の方針で動き、八月に元日銀福島支店長の鉢村健氏に出馬を要請。鉢村氏も立候補を表明した。佐藤氏は三選出馬の去就をなかなか明らかにしなかったが、八月末には「佐藤氏、不出馬の意向」と複数の新聞が報じた。

 福島、沖縄の知事選と、消費税率一〇%への引き上げ判断が年内の政治の焦点というのが大方の見方だが、ここにきて衆院の年内解散説もささやかれ始めている。

 解散の時期について、最も順当とされているのは来年夏の通常国会閉会後だ。安倍首相が長期政権を築く上で、来年九月の総裁選の前に解散に踏み切って勝利すれば、無投票再選はほぼ確実。消費税率引き上げ前の駆け込み需要で経済指標が上向いている可能性もある。

 こうした中、年内のサプライズ解散説が出てきたのは、仮に福島、沖縄の知事選で自民党が連敗すると統一地方選にも悪影響が及ぶため、「連敗モード」を断ち切る狙いがある。さらに、来年、統一地方選、集団的自衛権の関連法案の国会審議、総裁選、消費税率引き上げなど窮屈な日程の中で衆院選を実施するよりは、今年、北朝鮮の拉致問題で進展があった場合を想定し、それを追い風に、野党が準備不足で再編も進まないうちに一気に勝負をかけた方が得策という判断がある。

 年内解散は「うわさレベル」(首相周辺)との見方が大勢だが、「政界は一寸先は闇」との言葉もある。(直)
(了)

〔『中央公論』2014年10月号より〕