「スーパー戦隊シリーズ」50年の歴史に幕......初代ゴレンジャーが語るヒーロー番組の本髄
(『中央公論』2026年3月号より抜粋)
5人組であることの説得力
鈴木 「ゴレンジャー」にアオレンジャーに変身する新命明役で出演することになった経緯を教えてください。「仮面ライダーV3」の風見志郎役で大ブレイクした直後ですね。
宮内 連続ドラマのレギュラーを3、4本抱えていて、スケジュールに隙間がないのに「どうしても出てくれ」と言われました。そもそも僕は、ヒーローは1人で戦うべきだと思っていたし、5人組ではヒーロー性が分散すると懸念していた。正直、5人で一緒に戦ってどうなるのか想像がつきませんでしたよ。
鈴木 今でこそ戦隊シリーズが定着しましたが、前例がほぼなかったわけですよね。
宮内 やりたくないから文句ばかり言っていたら、原作の石ノ森章太郎先生に呼び出された。「どうして嫌なんだ」と聞かれたので「スケジュール的にリーダー役は出来ないし、リーダー以外は嫌です」とお答えした。「隊長に『右向け』と言われて右を向くのに僕は耐えられません」と。そうしたら石ノ森先生が「隊長のアカ(変身前の海城剛役・誠直也)が宮本武蔵、アオがライバルの佐々木小次郎と考えて演じたらいい」と言ってくださった。そうして始まったのが「ゴレンジャー」です。
鈴木 番組では体当たりのアクションの連続です。湖上を行くロープウェイからの片手宙づりとか......。
宮内 かんざんじロープウェイ(静岡県浜松市)でのロケですね。ぶら下がるだけじゃなく、ゴンドラの屋根のさらに上、ロープにゴンドラを吊るすハンガーの上に立ちました、命綱なしで。あの高さから落ちたら、湖面はコンクリートの地面と同じですから、木っ端微塵になりかねない。
鈴木 怖くないのですか。
宮内 怖くない、と言ったら嘘になりますが、バカだからね(笑)。「すごい!」と視聴者に思わせることだけを考えていました。人がやらないことをやるのが好きなんですよ。
鈴木 真冬に海に入った回もありますね。
宮内 鳥取ロケです。バリブルーン(ゴレンジャーの大型戦闘機)が不時着する話で海に浸かりました。確か12月24日の撮影で、雪が降っていました。
鈴木 とんだクリスマスプレゼントですね。
宮内 風呂は用意されていたけれど、スタッフに「すぐに入っちゃ駄目だよ」と注意された。水道水から徐々に身体を慣らさないと心臓麻痺を起こすのです。水道水が温かく感じられるほど、冬の日本海は冷たかった。
鈴木 超人的な新命明がこれほど身体を張っても敵にやられるのだから、変身しないと勝てないのだな、という説得力がありました。
宮内 僕は「やられの美学」といって、徹底的に敵に痛めつけられるようにしました。つけまつげのグルー(糊)で瞼(まぶた)を腫れたように固め、目の周りを青く塗って痣(あざ)を作った。メイクは全部自分でやり、ぼろぼろに顔を汚した。そうすると敵の強さが際立つでしょ。変身しないと駄目だし、1人じゃなく5人の力を合わせないと勝てないんだな、と視聴者が感じる。そうじゃなきゃ変身する必然性も5人で戦う必要もないですから。
鈴木 宮内さんは「キイハンター」(TBS系、1968〜73年)にも途中からレギュラー出演されています。「ゴレンジャー」には同番組の竹本弘一監督らも参加していますが、影響は受けましたか。
宮内 (番組で共演していた)千葉(真一)先輩の影響はあるでしょうね。千葉先輩がやらないようなことをやってやろう、という気持ちはずっと持っています。誰よりもすごいアクションをして、皆をあっと驚かせたい。それに、いつも言っていますが、僕は、高いところと火薬が大好きなんです。
鈴木 「ゴレンジャー」でも派手な爆発場面がたびたびありますね。
宮内 そうでしょうか? その前の「V3」では、某所のロケでの爆発で小島の形が変わったと言われたり、水中で火薬を爆発させて漁業組合に怒られたりしたから......。それと比べたら「ゴレンジャー」は入門編くらいでしょう。爆発の中を走り抜けるのは日常でしたし。ただ、爆発は、爆風で石が飛び散って痛い。脚には傷がたくさん残っている。僕は「脛(すね)に傷持つヒーロー」ですよ。(笑)