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感染者数で煽るポピュリズムに踊らされるな コロナ禍に再考する民主主義の本来 先崎彰容

先崎彰容(日本大学教授)

福田恆存が論じる「政治と文学」

 コロナ禍には戦時中とも通ずる程度の危機感が必要であることは理解している。しかし第一の問題として、この1年以上にわたる期間において、連日、感染者数の数字を垂れ流し、あるいは煽るように危険性を叫ぶのは、明らかに逆効果を生んでいる。逆効果とは、筆者が俗に〝感染者数パワハラ〟と呼んでいるもので、つまりこれだけ連日、数字を突きつけられ緊張を強いられることは、あたかも営業マンが部屋に缶詰めにされ悪い営業数字を毎日怒鳴られ続けているのと同じ状況を生み出すからだ。日本全体が追い詰められ、いまや恐怖症に似た心の傷を負っているのではないかと危惧する。

 コロナ禍における自殺率の急増が伝えられているが、この状況で経済的かつ精神的に追い詰められた人たちが自ら命を絶ったことは想像に難くない。必要以上の危機感を主導しているのはマスコミだが、それを引いて、さらに煽るように演説する野党候補者がいたことも事実である。

 第二にはそれと関連して、では政治の役割とは、果たして感染者数を絶対にゼロに近づけることにあるのか、についても一考の余地がある。その際に参考になるのが文芸批評家の福田恆存だ。著名な評論「一匹と九十九匹と」の中で、おおよそ次のように述べている。

 

(『中央公論』2021年9月号より抜粋)

先崎彰容(日本大学教授)
〔せんざきあきなか〕
1975年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。東北大学大学院博士課程修了。政府給費留学生として、フランス社会科学高等研究院に学ぶ。専門は日本思想史。著書に『ナショナリズムの復権』『違和感の正体』『未完の西郷隆盛』『国家の尊厳』などがある。
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