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常見陽平「コロナ禍で変わった『働き方』を検証する」

常見陽平(千葉商科大学准教授)

問題も生じているリモートワーク

 少し前、Twitter社を買収したイーロン・マスクが、リモートワークを減らしてオフィスに出勤するよう従業員に勧告した話が非難を集めました。

 確かに有無を言わさず出勤を求めるやり方には賛同できませんが、出勤することすべてが悪いかと言えば、そうは言い切れないと思います。

 リモートワークには、良い面がたくさんあります。先日、優秀なビジネスパーソンたちと話す機会があったのですが、彼らはリモートワークによって、いい意味で営業の概念が変わったと言っていました。以前は商談があれば、クライアントにアポイントをとり、自社から担当者や上司が出向いていた。でもリモートなら、場所を設定したり移動したりする時間が省ける。

 それだけでなく、担当者だけが電話で済ませていた案件に、テレビ会議やチャットで上司や同僚も参加できる。スター営業部長や課長に全国の商談に参加してもらい、助言を受けることもできるというのです。これはリモートを上手く活用しているケースですね。

 一方、リモートワークの問題点も指摘され始めています。例えば、リモート会議や打ち合わせでは、相手の頷きや笑顔によるニュアンスが伝わりにくい。私もコロナ下でオンライン授業を行っていましたが、学生の理解度や習熟度を測るのが難しいと感じることがありました。

 自宅はオフィスほど仕事に集中できる環境でない場合も多く、孤独感がつのり、それがストレスになることもあります。私の妻は、外資系IT企業に勤めています。そこはコロナ前からリモートワークが認められており、人間関係も良好だったのですが、リモートワークを1年半続けたころに、彼女は軽い適応障害になってしまいました。

 実は、このようなケースは少なくないと聞いています。つまり、人によっては、通勤で、朝、適度に日光に当たり、軽い運動をすることが健康維持につながっていたのではないでしょうか。もちろん、過酷な通勤ラッシュを肯定するつもりはありませんが、通勤にはそういう効果もあるはずです。

「リモートで十分仕事は回る」と言う人もいますが、リモートワークは万能ではないと思います。仕事の内容によって、また、会社とその事業、部署やチームの置かれている状況によって、適している、適していないがあるはず。本来は、それらを吟味しながら導入を進めるべきだったと思うのですが、このコロナ禍で十分検討する時間もないまま、物凄いスピードでリモートワークが広まってしまった。その弊害は大きいと思います。

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