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常見陽平「コロナ禍で変わった『働き方』を検証する」

常見陽平(千葉商科大学准教授)

増加する過剰なバッシング

 新型コロナは、物理的にだけでなく、心理的にも人と人との距離を離してしまいました。特に、自分と異なる意見に対して不寛容になり、何かが槍玉に挙げられると、過剰なバッシングにつながるようになったことは問題です。SNSでは、政治的な立場から、マスクやワクチンに対する考え方まで、過激な意見が飛びかうようになりました。アメリカが典型的で、マスクをするかしないかが、イデオロギー対立にまで発展していました。

 日本でも、アメリカほどではないにせよ、いがみ合いレベルのことはしょっちゅう起きています。働き方の議論についても同様で、Twitter社のリモートワーク廃止宣言の例のように、その会社や仕事の実情を鑑みずに、バッシングが始まる傾向にあります。

 槍玉に挙げられがちなものの一つが、たばこやたばこ休憩でしょう。私は喫煙者ではないし、たばこの臭いも苦手ですが、どうもたばこや喫煙者だけが都合よくバッシングの対象にされているように思えてなりません。

 もちろん、健康面を考えれば、どんどん吸いましょうとは言えません。ただ、文化的な側面まで否定することはないと思うのです。

 オフィスでは、喫煙のために休憩することが非効率だとも言われますが、喫煙者にとってたばこ休憩がいいリラクゼーションになり、喫煙所での対話やコミュニケーションから新しいアイデアが生まれることもあるので、一概に効率が悪いとも言えないでしょう。

 非喫煙者が、喫煙者だけが休めるのは不公平だと言うのであれば、同じ時間休憩をとればいい。実際に非喫煙者向けのリラクゼーションスペースを作っている会社もあります。受動喫煙対策を十分行うのは当然ですが、喫煙所を作り喫煙者の権利を守ることは、社員の福利厚生の一つと考えることもできます。

 休憩を含め、労働時間の問題は、より慎重に議論すべきだと思います。メディアでもよく「ワークライフバランスの実現のために、労働時間ではなく、成果で測る働き方を」といった論調で語られますが、すべて成果で管理する社会になればいいのでしょうか。それでは、成果を上げるために労働時間を増やしてしまうことも考えられます。

 また、公私の時間をくっきりと分けることが効率的であり、労働者のためになるとも言い切れません。休日にスマートフォンにアポイントのメールがきて、すぐに返信するのは時間外労働かもしれませんが、そのおかげで平日に別の業務をする時間ができれば効率がいいとも言えます。

 たばこ休憩の話ではないですが、休憩や休日のリフレッシュによって仕事のアイデアが生まれることもあります。公私の時間や場所は、ワークライフバランスの観点からはしっかり分けるべきですが、逆に分けないことで柔軟に働けるとも言えます。

 これは、実はかなり難しい問題で、しっかり時間をかけて議論すべきことではないかと思います。

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