藤田文武 政党は経営する時代

藤田文武(日本維新の会幹事長)
藤田文武氏
 政党運営に中期経営計画を取り入れるなど、その手法が注目を集める藤田文武・日本維新の会幹事長。党のキーパーソンは、維新伸張の理由や党のこれからをどう考えているのか。インタビューで迫った。
(『中央公論』2023年8月号より抜粋)
目次
  1. 選択肢を提示できた
  2. 経営者から政治家へ

選択肢を提示できた

──選挙の指揮を執る幹事長として、2021年以降の衆参両院選と統一地方選での議席増の理由をどのように分析していますか。


 自民党がこれまで形づくってきた政治や社会に対して、「今のままではだめだ」「何か変えなくては」と思う有権者にとっての選択肢になれたことが理由だと思っています。

 すでに大阪では、自民党大阪府連を野党に追いやり、自民党に代わる改革勢力として実績をつくってきました。とは言え、私たちの実力不足で大阪以外の地域で選択肢を示すことができず、大阪の地域政党どまりでいました。

 今回の統一地方選では、これまで議員が一人もいなかった選挙区にも候補者を積極的に擁立しました。日本維新の会の考えを訴え、維新という選択肢を示せたことが議席増の要因だったと見ています。政治の現状を変えたい方は大阪以外のどの地域にもいて、選択肢さえ提示できたら必ず支持を得られると思っていました。特に近畿圏で議席を多く獲得できたのは、大阪での実績に対する評価の表れだと受けとめています。


──今年の統一地方選で600人以上の議席を獲得するという目標は、藤田さんが幹事長になって策定した「中期経営計画」で示したものでした。策定のねらいを教えてください。


 中期経営計画を政党に導入した一番のねらいは、組織のコンセンサスをつくる点にあります。組織のすべての活動は目標達成のためにあることを党内に浸透させるためです。

 そのうえで具体的には、党の地方組織を強化することを最優先で進めてきました。就任当時は47都道府県のうち、地方支部があるのは半分以下だったのが、かなりのスピード感で37にまで増やすことができました。地方支部の空白地域を少なくできたことも伸張の理由だと思います。

 そもそも私が中期経営計画を導入しようと思ったのは、自分がゼロから企業を起こして経営した経験に基づいています。あるとき知り合いに誘われて、フォーバル創業者の大久保秀夫さんが主宰する経営塾に参加しました。そこで中期経営計画について学んだんです。中期経営計画とは、会社のビジョンやミッション、数値目標を定めるものです。そして、3~5年の期間でその目標に沿った行動計画や予算配分を決めていく。そうしてすべての企業活動をその目標にコミットするようにつなげていきます。

 すぐに自分の会社にも取り入れてみたら、会社の業績がめちゃめちゃ伸びたんです。私もそうでしたが、やはり中小企業は目の前の短期的な経営課題に囚われがちです。中長期のビジョンがないと、スタッフが生き生きとしないし、組織全体のエネルギーが最大化されない。これが経営者時代に学んだことでした。

 1年半前に幹事長に就任したとき、経営と政治という違いはあれ、組織を伸ばしていくためのノウハウは政党にも転用できるのではないかと思いました。自分はまだ若くキャリアも浅いので、前任の馬場伸幸さん、その前の松井一郎さんのような政治スタイルを真似できないことは明らか。それならば、経営実務という自分の得意分野で勝負するしかないと割り切ったんです。私が幹事長になった当時の松井代表も馬場共同代表も、「おもろいからやったら?」と即答でOKしてくれました。お二人はもともと自民党出身で、いわゆる昭和スタイルの政治を熟知しているベテラン政治家ですが、若い人材を取り立てることに積極的でした。

 そうして打ち出したのが、「政党を経営する」というコンセプトです。企業の経営企画室に相当する「党改革プロジェクトチーム」を創設して、国会議員か地方議員かを問わず実務家タイプの若手議員に入ってもらい、中期経営計画を作成しました。その作成過程には、現政調会長の音喜多駿さん、現総務会長の柳ヶ瀬裕文さん、当時は大阪府議会議員で先日大阪市長に就任した横山英幸さんも関わっていました。党の全体方針を理解して動ける議員を多く生み出せた点も、計画策定のメリットですね。

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