住吉雅美 現代社会の法と自由を考える――それはほんとうに「あなたのため」なのか

住吉雅美(青山学院大学教授)

正義感と嫉妬心は表裏一体

 SNSの炎上で記憶に新しいのが、自民党女性局の議員が研修中にパリのエッフェル塔前で撮影した写真をSNSにアップしたことによる炎上です。ようやくコロナによる渡航制限が緩和されたと思ったら急激な円安で海外旅行へのハードルが上がり、鬱々とした思いを抱いていた人たちが、浮かれたように見える写真を目にして、イラッとするのはわからなくはありません。「国民は自腹で旅行するのに、国会議員は税金か」(注:参加者の一人、松川るい氏によれば研修費用は党費と自費)という恨み節も加わり、過熱してしまった。元皇族の小室真子さん夫妻へのバッシングの根底にも、同様の気持ちがあったと思います。

 ただ、ここまで多くの人が嫉妬をむき出しにするようになったのは最近のことではないでしょうか。かつてなら「国会議員が仕事で行くならいいじゃないか」といった程度に思う人が多かったでしょう。国会議員へのバッシングは、社会が平等になったからこそ生まれた、正義感と表裏一体の嫉妬心ゆえだと私は考えています。身分制度の強固な社会では、「どうせ生まれが違うのだ」と、異なる階級の人への嫉妬は起こらなかった。「なぜあいつらだけがいい思いをするんだ」と感じるのは、誰もが平等という前提があればこそ。裏を返せば平等を保つ原動力にもなる。正義感と嫉妬心は表裏一体なのです。

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