政権3年目、正念場で「結果示す」 岸田文雄首相インタビュー

岸田文雄〔きしだふみお〕

外交は「信頼関係の積み重ね」

――首相在任期間は、今世紀では小泉純一郎政権、第2次安倍晋三政権に続く長さになりました。国内の政治基盤が安定して在任期間が長くなれば、国際的な知名度も上がり、外交上有利に働くとも言われますが、それを実感したことはありますか。


 振り返ってみれば、外務大臣や総理大臣として外交に関わってきた積み重ねのアドバンテージを感じることは度々ありました。やはり外交は人と人との関係が基本です。人間の付き合いにおいて、信頼関係は一朝一夕で得られるものではない。長い付き合いの中でいろいろな議論をし、いろいろな仕事をし、何気ない立ち話をする中で相手の人間性を知り、信頼することができる。こういった積み重ねが大事だと思います。そして国内政治が安定していると、発言に説得力が増すという点で意味があるとも感じました。

 昨年、日本はG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)や日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の議長国などを務めましたが、その際にも信頼関係の積み重ねがあったことの意味の大きさを度々感じましたね。


――G7では地元・広島で「核なき世界」に向けたメッセージを発出したほか、アメリカのバイデン大統領らG7首脳が揃って広島平和記念資料館を訪れました。資料館訪問に難色を示していた核保有国もあったと聞きます。


 そうですね。被爆地で開かれる初めてのサミットであり、平和について深く考えさせられる、国際秩序を考えるうえで大変意義のある会議だったと思います。被爆地の関係者として、被爆の実相に触れてもらいたいという思いを持って、この日程を組みました。やはり各国首脳との信頼関係があるからこそ、私の思いを深く理解していただき、我々の用意した日程にご協力いただけた面はあったと思います。


――これまでの岸田外交の最大の成果は何だとお考えですか。


 私が政権を担うようになってすぐに、ロシアによるウクライナ侵略が起きました。国連の安全保障理事会の常任理事国が隣国を侵略するという、従来の国際秩序が根底から覆されるような出来事です。新たな国際秩序について考えなければいけない、歴史の大きな転換点を迎えていると感じました。分断や対立のある時代だからこそ、私たちは改めて協調に向けて努力しなければいけない。そして協調するためには、皆が納得する「物差し」が求められます。

 例えばG7広島サミットにおいても、G7のみならずインドやインドネシア、ブラジルといったグローバルサウスと呼ばれる国々の首脳、そしてウクライナのゼレンスキー大統領にも参加してもらいました。これらの国々は立場や考え方は異なるかもしれない。それでも、同じテーブルを囲んで、国際法をはじめとする法の支配に基づいて自由で開かれた国際秩序を作るべきであるという点、そして力による現状変更は世界のどこであっても許してはならないという点で一致できました。そしてその流れを、その後もASEANや中東、アフリカなどの多くの国々と共有しています。激動する歴史の転換点において、今後の国際秩序の物差しを示すという、意味のある外交ができたと私は思っています。

 とはいえ、まだまだ先行きが不透明な時代です。これからも多くの国が「この点においては一致できる」という国際的な物差しをしっかり共有し、それを基に国際社会が再び協調できるように努力していきたいと思っています。

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