政治が揺さぶる日中ビジネスの現場 メディアが報じた「キャンセルの嵐」の実態は

浦上早苗(経済ジャーナリスト)

インバウンドへの本当の影響は

 中国政府による圧力は、高市発言から7日後の11月14日、中国外交部が「中国人が襲われる事件が多発」「政治家の挑発的な発言が日中交流の雰囲気を著しく悪化させ、中国人の安全にリスクをもたらしている」ことを理由に日本旅行の自粛を呼びかけたことに始まる。

 そこから数日、日本メディアは相次ぎインバウンドへの影響を報じた。一例を挙げると「人的往来の中止相次ぐ 日本旅行や自治体交流に影響 航空券50万件キャンセルか」(11月18日、時事通信)、「『予約ゼロ苦しい』 中国団体客がキャンセル、航空便減便の動きも」(11月22日、毎日新聞)などだ。

 タイトルを追うとキャンセルの雨あられという印象を受けるが、報道機関の記者はこういうとき、「影響がある」との声をピンポイントで拾って記事をつくるのが常である。

 そして記事をよく読むと、中止になっているのは団体旅行であることが分かる。旅行代理店の関係者や中国側の情報によると、多くが内陸部や東北部を出発地とする国有企業による旅行や教育旅行だったという。

 団体旅行の実施の可否を判断するのは旅行代理店か主催者(企業)だ。中国政府が自粛を呼びかけた以上、キャンセルに動くのは当然だろう。

 中国から団体旅行客を多く受け入れている宿泊施設、観光地にとっては大打撃だが、煽り気味の報道とは裏腹に、インバウンド業界の受け止め方は比較的冷静だった。

 というのも、中国人の団体旅行は日本のインバウンドにとって、もはや主役ではなくなっているからだ。

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