清水亮 今、世界中でゲーム開発者が"パニック"に陥っている理由とは?企業が掲げる「民主化」の嘘

人工知能はウソをつく【第5回】
清水亮

「民主化」が意味するもの

人工知能開発に関しても、「当社はAIを民主化する」といった主張を掲げる会社が後を絶たなかった。ならばあなたの会社は社長をユーザーの投票で決めるのか? と聞くと決まって薄ら笑いをされるのに、である

生み出したAIを売り込む時も、「民主化」という言葉を積極的に使っていた会社はいくつもあった。典型的なのはMicrosoftだ。しばらくの間、彼らのプレゼンテーションの最後は「AIを民主化します」で締めくくられていた。

たちの悪い冗談である。

確かに、世間では独裁国家と認識されている北朝鮮も、正式名称は朝鮮民主主義人民共和国だ。それでも企業体よりはいくばくか「民主的」だろう。実態はどうあれ、選挙があるのだから。

先述した会社が掲げる「民主化の本当の意味は、「うちの製品を買え」というものでしかない。

MicrosoftはAIを民主化すると言いつつ、ChatGPTを開発するOpenAIに大資本を投入し、独占している。

Microsoftの介入によって、OpenAIはその名前と裏腹に全くクローズドな組織に変化した。全てをオープンソースとして提供していたOpenAIは、ソースコードの開示をやめ、クラウドで収益を上げる構造に変質した。事実上の親会社であるMicrosoftのクローンのように。

その上、もっと悪いことに、OpenAIが提供する「API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)」は短時間の間に大量に呼ぶといとも簡単にストール(使用不能)する。正当な料金を払っているにもかかわらず、だ。

意図的なものかそうでないかはわからないが、これを回避するにはさらにMicrosoft用意したAzureを使うしかないとも言われている。これが「企業の語る民主化」の正体である。だから現在、GPTのAPIを使用してまともなコンシューマ向け製品を作ることはできていない。

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