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エイプリル・フール、「戦艦大和」の吉田満に会う(四)

【連載第十八回】
平山周吉(ひらやま・しゅうきち)

最も未来性のある新興出版社

 ここから銀座出版社と安吾との縁ができる。『堕落論』は中央公論社から出ることになっていたが、三千代夫人の入院費用が急遽必要になって、前借りに応じる銀座出版社に本を委ねた。安吾を直接担当したのは入江と高木常雄の二人だった。水上の回想には小林秀雄の名前も出てくる。

「その後私は小林秀雄さんの評論集を企画、そのことを坂口さんに話したことがありました。坂口さんは、「それは大へんいいことだから是非やれ」と激励され、小林氏あての紹介状を書いてくれました。/この企画は社の事情によって実現の運びにはいたらず、坂口さんの紹介状も、いたずらに机の引き出しに眠っておりました。後日私がそれを開封しました時、坂口さんが『堕落論』を私にくださった理由の一つが、わかったような気持がいたしました。それには――
――銀座出版社は出版の外に新聞と雑誌をやっている手がたい新興出版社ですが、特に新興出版社のうちで、最も良心ある誠実なものではないか、と思われます。新時代的な明るさと、裏面のなさ、出版界の一つの新しい、そして好ましい性格をつくりだした最も未来性のある社のように思っております。......」

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