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エイプリル・フール、「戦艦大和」の吉田満に会う(四)

【連載第十八回】
平山周吉(ひらやま・しゅうきち)

大きな反響と、中島健蔵・梅崎春生による批判

「サロン」六月号の反響は大きかった。よく言及される中島健蔵と梅崎春生の批判とは、「読売新聞」(昭和24・6・11)に載った「戦争文学の流行批判」であろう。評論家の中島健蔵は「軍艦大和」が「戦争中の新聞特派員の報道以上に戦時型のスタイルである」とし、文学として未熟だと批判した。「戦時型を復活させ、流行させることは、明かにポツダム宣言への反逆であり、新しい日本への反逆」だと。左翼のよくある論法でしかない。戦争文学「桜島」でデビューした作家の梅崎春生は、戦争文学全般を語り、個別の作品への言及はない。ただ、文末の「付記」が異様である。

「サロン前号「軍艦大和」について、私が推薦文を書いたことは、全く私の不明である。私は今に到るまであの小説を未だ読んでいない。読んでもいない小説にたいし、私の文章があんな風に結びついたことのいきさつは、別の場所でくわしく書くが、今は私の不明として推薦を取消す次第である」

 作家の発言というよりも、梅崎作品にしばしば登場する精神不安定で、ストレンジな人物の発言のようである。「別の場所」の文章が行方不明なので、「サロン」に載った推薦文「「戦艦大和」を推す」を、全文引用しておこう。吉川、小林、林に比べ、ごく簡単だ。

「大和の運命は、或る意味では、日本海軍の性格や運命を象徴していると思う。/この手記から、私は戦争の惨禍と非人間性を強く感じ、また巨大な死の柩の中にすら、人間性は滅びるものでないということを強く感じた。著者の筆も極めて即物的で、誇張がない。あんな異常な状況に際し、あゝいう感覚と観察力を持続し得たことは、やはり作者の人間的鍛錬の賜ものだろうと思う」

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