労働と読書の歴史から現在を照らす <新書大賞2025>大賞『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』レビュー

新書大賞2025
三宅香帆
皆さんから寄せられた投票の中から、いくつかを抜粋してご紹介します。

労働と読書の歴史から現在を照らす

 新進気鋭の文芸評論家が、日本の労働の問題点を抉り出した著作。

▼思わず手に取らずにはいられない秀逸なタイトル。で、「仕事をしていたら忙しいし、疲れるからだよね」ぐらいに考えて読んでいったら、だんだん心がザワザワしてきて、「あなたの働き方、あなたの人生、それでいいんですか?」という根源的な問いに直面させられてしまった。軽やかにして深くて怖い本(幻冬舎新書編集長・小木田順子)

▼日本の近代以降の労働史と読書史を俯瞰できる。終盤では現代の資本主義社会が抱える矛盾を指摘。著者提唱の長時間労働の是正、「半身の働き方・生き方」は考えさせられた(光文社新書編集長・小松現)

▼読書を通じ、他者の文脈を知ろうという著者の主張に胸がすく思いがした。新自由主義に耽溺するのではない価値観の第一歩を本書から(くまざわ書店八王子店・磯前大地)

▼この本が売れる度、読書について「考えたい」「もっと知りたい」と思う人々が大勢いるのだと、書店員として勇気づけられた(ジュンク堂書店大阪本店・殿塚弘基)

▼3年前に定年を迎えて隠居した。さぁ本がたくさん読めるぞと思ったが、実際にはそうでもない。「全身全霊で働く」ことと同じように、「一生懸命、暇にする」ことも、本を読めなくする原因かも(大阪大学名誉教授・仲野徹)

▼読書が教養・修養から、「娯楽」を経て「ノイズ」へと変わる、その変遷には人々が目指す「自己」のあり方が関わっている(日本経済新聞・桂星子)

〔『中央公論』2025年3月号より〕

 

「新書大賞2025」上位20冊までのランキングと、有識者45名の講評など詳細は、2025年3月10日発売の『中央公論』3月号に掲載されています。

特設ページでも上位20位までのランキングを掲載しています。
「新書大賞」特設ページ https://chuokoron.jp/shinsho_award/

 

なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)

三宅香帆

出版社:集英社
発売日:2024/4/17

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中央公論 2025年3月号
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