生かせるか 女性労働力

深層NEWSの核心
近藤和行/玉井忠幸

 日本の労働力人口の減少を補う切り札として、女性の社会参加に注目が集まっている。その流れを推し進めていくために、いま求められているのは何なのか。これまでに出演したゲストの発言を踏まえて、キャスター二人が語り合った。

◆「働く女性待望論」の背景

「(将来の日本は)人口減少で労働力が足りなくなり、今のような社会保障制度は維持できなくなる」=竹中平蔵・慶應義塾大学教授(七月十日)

玉井 今後の日本の経済にとって大きなネックになりかねないのが、人口減による労働力不足という問題です。日本の人口は現在一億二七〇〇万人ですが、二〇四八年には一億人を割るという推計もある。

近藤 人口減に伴って労働力人口も必然的に減っていく。今年度の「経済財政白書」は、二〇一三年に六六〇〇万人だった労働力人口が、三〇年には九〇〇万人少ない五七〇〇万人にまで減ると見込んでいます。労働力人口が減るというのは、「稼いでくれる人が減る」という面と、「お金を使ってくれる人が減る」という面の両面の意味があります。GDP(国内総生産)の減少など、経済的に大きなマイナス要因になることは間違いありません。

「(労働力人口減少に対応するためには)働く女性や高齢者を増やしていくことが必要だ」=自民党の塩崎恭久政調会長代理(五月二十二日)

玉井 では、少子化の中で労働力を確保するにはどうするか。考えられる方法は三つあります。「外国人労働者の活用」「いったんリタイアした高齢者の活用」「家庭に入っている女性の活用」ですね。しかし、外国人労働者の活用は、異論も多い移民の受け入れ問題と関係しているから、ハードルが高い。そこで、高齢者と並んで女性の活用が重要になってくるわけです。

近藤 今から三〇年近く前の一九八六年には、職場での男女平等を確保し、女性の社会進出を進めようという「男女雇用機会均等法」が施行されましたが、実際には期待されたほどの成果は上がらなかったといえるでしょう。ここにきて労働力人口の危機が到来したことで、ちゃんとした取り組みを始めなければならないという機運がようやく盛り上がってきたのですね。

玉井 日本社会では総じて女性の登用に対する意識が低かったのですが、流れはだいぶ変わってきました。もともと日本の企業には横並び体質があるから、同業のライバル社が女性を登用すれば、「ウチも」といって追随する企業が多いのではないか、と指摘する人もいます。その意味ではこのトレンド、いったん動き出せば一気に加速するのではないでしょうか。

近藤 女性管理職の比率など、目標を掲げる企業も出てきましたね。もちろん、何が何でも数値目標を達成すればいいという話ではない。女性の登用にあたっては明確で透明性ある評価ルールを作って、男性社員の無用な反発を防ぐような工夫も必要だと思います。

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