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萩生田光一✕田中愛治 [対談]文科大臣×早大総長 ポストコロナの大学像

萩生田光一(文部科学大臣)×田中愛治(早稲田大学総長)×司会:古沢由紀子(読売新聞編集委員)

大学での感染制御の難しさ

─小中高校に比べ、大学の対面授業の再開が遅れていることに疑問の声があります。当初、一部の大学が感染を拡大させていると批判されたことや、大学生は小中高校生や会社員のような管理や把握が難しいという事情があるようですが。

田中 大学生の行動は、やはり中高生とは違うんですよね。通学時間が一時間かかる学生はざらにいますし、長ければ二時間以上。帰る途中に数名で会食するなど、行動様式が中高生とは異なります。会食からのクラスター発生が多いので、大学はむやみに対面授業を増やせないという事情があります。また、高校の場合は一クラスで感染者が出たら、そこだけ閉鎖すればいい。大学は二〇〇人の授業で感染者が出たら、その次の時間はみんなバラバラの授業に出ているわけですからコントロールがききません。その難しさをご理解いただきたい。対面の授業が少ないとメディアには責められますが、クラスターが発生すればまたメディアに書かれる。本当に綱渡りなんですよね。

萩生田 まだこのウイルスがどんなものか分からないときに、関西圏の大学でクラスターが発生し、社会的に非常に厳しい評価にさらされました。ただ、大学でも高校でも感染リスクをゼロにすることはできない。そういう意味では報道のあり方などもこの機会にもう一度考えていただく必要があると思います。しかも、批判されたケースは授業で感染したわけではなく部活動の寮などで発生したものでした。いわば家庭内感染なんです。大学は社会的使命が高いため集団で感染者が出ると社会的批判にさらされ、キャンパスを閉めてしまう。それで学びや対面授業の機会を失った学生がいるとすればかわいそうですよね。やはり社会全体で、お互いリスクがあることを承知の上で前に進む必要がある。私は大学関係者にも「いろんな感染予防対策をやった上で感染者が出ることもありうるかもしれない。それを前提に頑張ってほしい」と申し上げています。

─地方のそれほど感染者が多くない地域では大学の対面授業が始まっています。これを機に地方の大学に行こうかという機運が出てくるかもしれません。首都圏の大学として危機感はありますか。

田中 あまり心配はしていません。将来的には大学のあり方も変わるのではないでしょうか。数年後には、地方にいながら半年はオンラインで早稲田の授業を受け、次の半年は東京で寮に入る。そういう柔軟なことができるようになるかもしれません。また、早稲田は同志社大学と国内交換留学をしていますが、そういうものをもっと広げ、例えば早稲田に入学しても二年までは地元の大学で学び、三、四年は早稲田に戻るということもできるかもしれません。また、地方にいてもオンラインで大都市圏の就職活動が可能になる。逆に東京にいても地方にUターンすることが容易になる。これから三、四年経つともっと自由になるのではないですか。我々も新しい時代に向かって変わっていくべきだと思います。

─文科省は地方の国立大学の定員を増やす方針を打ち出し、東京二三区の大学の定員規制も続いています。地方大学重視の流れは加速するのでしょうか。

萩生田 地方の国立大学の定員増を、お手盛りでやろうということはまったく考えていません。ただ、全国どこでも同じ学部や学びではなく、その地域のニーズに合った地方大学が必要だと思います。あくまで地方創生や地方の活性化に寄与する新たな学部や学びというものが社会のニーズとしてあって、そこで学んだ人たちが地域に貢献する仕事に就けることが確認できるなら、学部を増やしたり定員を見直したりすることがあっていいと思います。それを大学だけでやるのではなく、地方自治体と一緒になってプラットフォームを作ることが大事です。国立大学のみならず私立でもユニークな地域の大学はたくさんあります。国公立、私立の枠を超えて大学がその地域に必要な人を育てていくことが今後は大事だと思います。私はキラリと光る地方の小さな私立大学も、首都圏で世界に伍して戦っていく大学群も、どっちも大切だと思うんですね。このコロナを機に、移動に対してネガティブな思いを持つ若い人たちが出てくるとすれば、それは逆に地方が優秀な人材を抱え込むいいチャンスだと思います。こういうときこそ、企業も大学も競って地元の良さをアピールできるのではと期待しています。

(後略)

〔『中央公論』2021年2月号より抜粋〕

萩生田光一(文部科学大臣)×田中愛治(早稲田大学総長)×司会:古沢由紀子(読売新聞編集委員)
◆田中愛治〔たなかあいじ〕
1951年東京都生まれ。75年早稲田大学政治経済学部卒業。85年オハイオ州立大学大学院政治学研究科博士課程修了。政治学博士(Ph.D.)。青山学院大学教授、早稲田大学政治経済学術院教授などを経て2018年より現職。06年より早稲田大学教務部長、理事、世界政治学会(IPSA)President等を歴任。

◆萩生田光一〔はぎうだこういち〕
1963年東京都生まれ。87年明治大学商学部卒業。八王子市議会議員、東京都議会議員を経て、2003年衆議院議員選挙に東京24区から出馬し初当選。文部科学大臣政務官、内閣官房副長官・内閣人事局長、自民党幹事長代行などを歴任。19年より現職。
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