萩生田光一✕田中愛治 [対談]文科大臣×早大総長 ポストコロナの大学像

萩生田光一(文部科学大臣)×田中愛治(早稲田大学総長)×司会:古沢由紀子(読売新聞編集委員)
新型コロナウィルス感染症の流行で、大学はその姿を大きく変えた。
オンライン授業はいつまで続くのか、入試はどのように行われるのか……。
萩生田光一文科大臣と田中愛治早大総長が語り合った。(対談は12月に行われました)
目次
  1. 大学の授業はハイブリッドに
  2. 大学での感染制御の難しさ

大学の授業はハイブリッドに

─新型コロナウイルスの感染拡大で、授業がオンライン中心になるなど大学を取り巻く環境は激変し、大きな転換点を迎えていると思います。萩生田大臣は対面授業の再開を促す姿勢を打ち出していますね。

萩生田 一部では大学の授業はオンラインがいいか対面がいいかという二項対立のようになってしまっていますが、私が求めるのはどちらかを選ぶということではありません。高等教育はオンラインでも中身がある授業ができると思います。私が心配しているのは、一度もキャンパスに行けず精神的に非常に苦しんでいる大学一年生などです。私の元にも学生から直接メールが来ています。入学式もなく、クラスメートにも会ったことがない。それでいてパソコンの前で一日五時間も六時間も授業を受ける。画面に映る人が本当に教授かどうかさえ分からない。それでも一生懸命メモをとって勉強を続けている。みんな悩みますよね。文科大臣にそういう権限はないんですが「大学に何とか言ってくれませんか」と。田中総長にもお願いしましたが、学生の皆さんに安心と納得を与えられる説明をしてほしいんです。いたずらに対面授業だけをやってほしいとお願いしているのではありません。
 この間いろんな大学が知恵を絞りながらさまざまな授業形態をとっています。新年度には、オンラインと対面を上手に組み合わせたハイブリッドな授業が大学で展開されることが望ましいと思っています。

田中 対面授業を見合わせざるを得なかったのは、本当に我々にとって不本意な面があります。早稲田は学生同士の交流が非常に盛んで、それが一つの魅力でしたから。コロナ危機で私が総長として最初に言ったのは、これはリスク管理であるから、ダメージを最小に抑えなければならないということです。そのためのミッションは三つあって、一つは学生の健康と命を守ること、二つ目が教育をしっかり提供すること、三つ目は研究を続けること。授業は対面が難しいので前期は全部オンライン。期末試験もオンラインです。秋からはゼミや実験を対面で始め、さらに後期後半の十一月二十三日からは、工夫して対面のクラス授業を増やしています。その中で分かったことが二つあります。一つは、中世以来のヨーロッパの大学の歴史から見ても、対面でディスカッションをする熟議によって学びが深まるのが大学の神髄であること。もう一つは、講義形式の授業は教員がしっかり準備すればオンラインでも相当効果が上がるということです。オンラインだと、学生は繰り返し視聴でき、速度も調整して自分の学びに合わせることができます。また大教室の五〇〇人授業で質問の手を挙げる学生はほとんどいませんが、オンラインだとよく手が挙がる。一人でしっかり学び、熟慮することはオンラインで可能。しかし、熟議はやはり対面でないとできない。この二つを組み合わせることが大事だというのは、先ほど大臣のおっしゃった通りで、我々の課題であるし、新しい発見でもある。

─文科省は、これを機に小中高校でオンライン教育を加速させる方針を打ち出しています。大学も、コロナ後のオンライン活用を拡大する方針のようですが。

萩生田 今回、オンラインのメリットを数多く確認できたと思います。早稲田大学では一限の授業の出席率がすごく上がったそうですね。パジャマでも出席できるから(笑)。今年度のオンライン授業はコロナ感染拡大の中で緊急避難的に始まったので、学生の満足度という点では十分ではなかったと思います。ただ、この間、授業の中身を練りに練ってオンライン授業の準備をしてきたので、来年度以降は良い授業ができるでしょう。中身が充実したオンライン授業が普及するならば、高等教育のあり方として決して否定するものではありません。
 ただやはり大学の四年間は、多くの人脈ができるほか、生涯のかけがえのない友人、もっと言えば将来の伴侶に出会うこともあると思うのです。キャンパスライフは各大学の売りだったはずですよね。そのキャンパスの良さを自ら手放すことはしてほしくない。今後、感染がどう落ち着くか分かりませんが、同窓の皆さんがキャンパスに集い、それぞれの大学のカラーを大切にしながら学生生活を過ごすことの良さを失ってほしくないと思っています。

田中 早稲田では学生五万人を対象にアンケートをとり、一万五〇〇〇人から回答を得ました。学生が望む授業の割合は、ウィズコロナの中では三割は対面の授業、七割はオンラインが良いと。感染が収束した場合はどうかと聞くと、七割は対面で、三割はオンラインでやってもらいたいという結果でした。学生はオンラインの良さも分かっていると思います。これは、教員にとっては結構負担です。対面授業なら、自分の考えを黒板に書いてしゃべればいいのですが、オンラインでは予めパワーポイントなどの資料を用意しなくてはいけません。教員も進化する必要があります。学生の希望は、ポストコロナでも三割はオンライン教育で、ということですから、大学も新しい教育を展開する必要があります。

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