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資本主義に抵抗せよ! 未来のための「脱成長」戦略 森田真生×斎藤幸平

森田真生(独立研究者)×斎藤幸平(大阪市立大学准教授)

複雑な状況にどうアプローチするか

森田 他方で、そうした概念に基づいて「反資本主義」という強いストーリーを掲げ、それで世界を変えられるほど、物事は単純ではないとも僕は思います。米国で独自の環境哲学を展開するティモシー・モートンは、気候変動やパンデミックなどの危機をただ危機として煽るだけでなく、ここから新たな人間像を描き出そうとしている人です。僕は彼の思想から大きな影響を受けているのですが、彼は気候やウイルスがもたらす現実が、人間が設定するどんなスケールからもはみ出していくことに着目しています。例えば今、こうやって向かい合って対話している間も、地球規模のパンデミックや、細胞内で増殖するウイルスのことが頭をよぎってしまう。自己の存在が、いかに無数のスケールの事物が錯綜するメッシュの中にあるかを自覚し続ける姿勢を、モートンは「エコロジカルな自覚」と呼びます。僕はこのような新しい現実の中でどのような自己像を描き、どのような感性を切り開いていくかということを考えようとしています。根本的な自己像の変革を経ることなしに、性急に「行動!」となってしまうと、環境に対してまた別種の暴力を働くことになりかねないと思っています。

 

(『中央公論』2021年9月号より抜粋)

森田真生(独立研究者)×斎藤幸平(大阪市立大学准教授)
◆斎藤幸平〔さいとうこうへい〕
1987年生まれ。ベルリン・フンボルト大学博士課程修了。博士(哲学)。著書に「Karl Marx's Ecosocialism:Capital,Nature,and the Unfinished Critique of Political Economy」(ドイッチャー記念賞受賞、邦訳『大洪水の前に』)、『人新世の「資本論」』(新書大賞2021)、編著に『未来への大分岐』がある。

◆森田真生〔もりたまさお〕
1985年東京都生まれ。東京大学理学部数学科卒業後、独立研究者に。京都を拠点に研究を行い、国内外で「数学の演奏会」「数学ブックトーク」などのライブ活動を行う。著書に『数学する身体』(小林秀雄賞受賞)、『数学の贈り物』『計算する生命』、絵本『アリになった数学者』がある。

撮影◎霜越春樹
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