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たばこ税増税をきっかけに考える喫煙者と非喫煙者の摩擦。「感情論」と「勘定論」に分けることが重要 二宮清純

対立を煽るのではなくお互いが共存できる社会に
二宮清純(スポーツジャーナリスト)

喫煙者と非喫煙者がぎすぎすしないように

 税金を上げ、その税収で喫煙環境を整備することで、非喫煙者も守られるし、結果的に肩身の狭い喫煙者も守られる。非喫煙者と喫煙者がぎすぎすした関係にならないためには、そのほうがいい。

 さらに、たばこ税の収益が喫煙施設や分煙環境の整備のためだけでなく、公園や病院や学校などの社会インフラの充実やまちづくりのために使われていることがわかるようになれば、喫煙者と社会とのぎくしゃくした関係も多少は緩和できるだろう。

 以前、たばこの税金について調べたところ、紙たばこの一箱あたりの税負担は、国のたばこ税が23・3パーセント、地方のたばこ税が26・4パーセントで、特別税が3・0パーセント、消費税が9・1パーセントと、たばこの値段の実に6割超が税金だった。しかし、これだけでは何に使われているかが不明確なので、もう少し具体的に、例えば、学校や病院や公園の整備に充てられたとか、道路の整備に充てられたといったことが明らかになるようにしたほうがよいのではないだろうか。

 私は、以前から、感情に訴える「感情論」と現実的なお金の話「勘定論」は分けて考えたほうがいいと考えており、たばこについてもそれが当てはまると思うのだ。

多様な嗜好が共存できる解決策の一つとして

 そもそもたばこは健康に悪いから、という反論はあるだろう。確かに、健康のことだけを考えたら、たばこをやめ、酒も飲まないほうがいいのかもしれない。しかし、実際にはたばこを吸う人もいるし、お酒を飲む人もいる。たばこも酒も嗜好品であり、一切禁止という社会が健全だとは思えない。

 また、近年は喫煙者、非喫煙者の双方から互いをファシスト呼ばわりする傾向が見受けられるが、あまり生産的だとは思えない。互いの溝が深まり、社会の分断を招くだけだ。

 たばこを吸うこと自体は法律に違反しているわけではない。嗜好品としてのたばこを吸える環境にするために、税金を高くして、社会環境の整備に充てるようにするのだ。そうすることで、嗜好品を愉しむ権利が守られるし、非喫煙者を副流煙から守ることもできる。

 私は40歳頃まで喫煙者だったので、喫煙者と非喫煙者の双方の気持ちがわかる。だからこそ言いたいのは、たばこを吸う・吸わないはゼロサム問題ではないということだ。「たばこを吸うのは自由だから文句を言われたくない、がたがた言うな」というようなことでもないし、「世の中から全てのたばこをなくすべきだ」というのもやりすぎだと思う。

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